2月試し読みまとめ
The Story Collecter
The Story Collector (English Edition)
- 作者: Evie Gaughan
- 出版社/メーカー: Urbane Publications
- 発売日: 2018/06/14
- メディア: Kindle版
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ジャンル:歴史、ファンタジー
ページ:287
あらすじ:1910年、アイルランド。Anna(アナ)はアメリカ人Harold(ハロルド)に請われて「フェアリーテイル」をアイルランド語から英語へ訳す手伝いをしていた。その100年後、アメリカからアイルランドへやって来たSarah(サラ)は2人の痕跡を知らず辿っていくことになる。
最初はSarahの視点から始まります。というか、Annaたちのことが直接語られることはないのかな…?試し読みの範囲ではそこまで判別できませんでした。
Sarahは何だかアンニュイな感じでかわいい人でした。
Win
Win: Proven Strategies for Success in Sport, Life and Mental Health. (English Edition)
- 作者: Brent Pope,Jason Brennan
- 出版社/メーカー: Hachette Books Ireland
- 発売日: 2018/04/05
- メディア: Kindle版
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ジャンル:メンタル、スポーツ
ページ:384
あらすじ:ラグビー解説者Brent Pope、精神療法士かつメンタルコーチJason Brennanがスポーツにおけるメンタルの重要性と、それを日常生活に取り入れる方法を説いた自己啓発本。
特にビジネスにおいて有効な手法が多いとのこと。スポーツにおけるメンタルコーチの重要性は最近よく耳にするようになりました。心が変われば体も変わると。ゴルフ選手の話でウォーターハザードの近くだと必ず使い古しのボールを使うエピソードがおもしろかったです。
また章の中で話題が変わる時は「ケルティック・ノット」が出てきます。これが出てきたらちょっと休憩して自分の心と向き合ってみてね!と書いてあったのが、何とも体験型というか現代風というか。
The Anniversary
The Anniversary (English Edition)
- 作者: Hilary Boyd
- 出版社/メーカー: Penguin
- 発売日: 2018/09/07
- メディア: Kindle版
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ジャンル:ロマンス、家族
ページ:416
あらすじ:Stella(ステラ)とJack(ジャック)はどこからどう見てもお似合いのカップルだった。しかし悲劇が2人を切り裂いてしまう。その後、互いに新しい相手を見つけていたが、ひょんなことから2人で孫の面倒を見ることになってしまう。
超エモ小説との触れ込みでした。これ伝わるかわからないのですが、書き出しが新クールのアニメ1話目みたいな感じですごくわくわくします。Stellaの何気ない日常パートなんですけど、この先の展開に期待、みたいな感情は何なのでしょう。作者の文章力なのか。
My Coney Island Baby
My Coney Island Baby (English Edition)
- 作者: Billy O'Callaghan
- 出版社/メーカー: Vintage Digital
- 発売日: 2019/01/17
- メディア: Kindle版
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ジャンル:恋愛、人生
ページ:256
あらすじ:Michael(ミカエル)とCaitlin(ケイトリン)は不幸せな結婚生活から逃れ、月に1度の密会を25年間繰り返してきた。その時間だけが人生の幸福だった2人。しかし悲劇は起こってしまう。ある1日を描いた物語。
世界の果てのような場所で、たった2人でいられたら…というロマンス感たっぷりの冒頭部分でした。お互いがお互いを心底大事に思っているのがよくわかります。
余談ですが途中で出てきた芸者についての描写があまりに詳しくて驚きました。作者、好きなんでしょうか?
The Woman in the Woods
ジャンル:ミステリー
ページ:496
あらすじ:半ミイラ化した女性の死体が発見された。どうやら出産のせいで亡くなったらしい。女性は一体誰で、出産時何があったのか? チャーリー・パーカーがその謎に挑む。
大人気シリーズ、チャーリー・パーカーの16冊目です。日本でもいくつか訳されてますね。
これとか。
今作はチャーリーと恐らく死体になったであろう女性の話が交互に出てきて雰囲気ありました。森の描写が良い。
BORD GÁIS ENERGY SPORTS BOOK OF THE YEAR 2018ショートリスト作品
An Post Irish Book Awardsの1部門であるBORD GÁIS ENERGY SPORTS BOOK OF THE YEAR 2018。
スポーツ関係のノンフィクションが選ばれます。
An Post Irish Book Awardsについては↓
受賞作品
GAME CHANGER(by CORA STAUNTON & MARY WHITE)
Game Changer (English Edition)
- 作者: Cora Staunton
- 出版社/メーカー: Transworld Digital
- 発売日: 2018/10/18
- メディア: Kindle版
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ゲーリック・フットボールの選手Cora Stauntonの自伝。ゲーリック体育協会(GAA)のアイコン的存在でもある。母の死やチームメイトとのいざこざなどを赤裸々に語っている。
ポジションはフォワードだそうです。身長172cmなので、かなり体躯に恵まれた選手なのでしょうね。ゲーリック・フットボールはフットボールと多少ルール等が異なるアイルランド発祥のスポーツです。野球派なので詳しくはわからん。
ノミネート作品
THE HURLERS(by PAUL ROUSE)
The Hurlers: The First All-Ireland Championship and the Making of Modern Hurling (English Edition)
- 作者: Paul Rouse
- 出版社/メーカー: Penguin
- 発売日: 2018/09/06
- メディア: Kindle版
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1882年、ハーリングはすっかり衰退していた。ゲーリック体育協会(GAA)の黎明期や政治との関わりからハーリングの歴史を綴った本。
ハーリングも上述ゲーリック・フットボールと並びアイルランドで人気のスポーツです。なんでしょうね、ラクロスのようなホッケーのような。文学作品を読んでいても、ちょこちょこ言及があるスポーツです。
AT ALL COSTS(by DAVY FITZGERALD & VINCENT HOGAN)
At All Costs (English Edition)
- 作者: Davy Fitzgerald,Vincent Hogan
- 出版社/メーカー: Gill Books
- 発売日: 2018/10/26
- メディア: Kindle版
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元ハーリング選手、現監督のDavy Fitzgerald氏の自伝的本。選手として2度、監督として1度全アイルランドのトップになっている彼が現役時代を振り返る。
単なる自伝というより、高いパフォーマンスをして成功をおさめるためのハウツー本的要素も持っているようです。
FIGHTER(by ANDY LEE & NIALL KELLY)
アイルランドボクサーとして初めて世界タイトルをとったAndy Leeの回顧録。ボクサーを志したときから最も慕っていたコーチを失うときのことなどを詩的な文章で語る。
上記本もそうですが、著者が連名になっているのは大体にして本人と取材して書き起こした記者という形になっています。
SEÁN CAVANAGH: THE OBSESSION, MY AUTOBIOGRAPHY(by SEÁN CAVANAGH & DAMIAN LAWLOR)
Seán Cavanagh: The Obsession: My Autobiography (English Edition)
- 作者: Seán Cavanagh,Damian Lawlor
- 出版社/メーカー: Black & White Publishing
- 発売日: 2018/10/16
- メディア: Kindle版
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ゲーリック・フットボールの有名選手Seán Cavanaghの自伝。
こうしてあらすじを書いていると本当にゲーリック・フットボールとハーリングの本ばかりですね。アイルランドでの人気の高さがうかがえます。
DRIVEN(by ROSEMARY SMITH & ANN INGLE)
Driven: A pioneer for women in motorsport ? an autobiography (English Edition)
- 作者: Rosemary Smith
- 出版社/メーカー: HarperCollins
- 発売日: 2018/10/04
- メディア: Kindle版
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女性モータースポーツ選手のパイオニア的存在Rosemary Smithの自伝。スポーツの話や自身のキャリアだけでなく私生活まで赤裸々に語る。
本当にモータースポーツ系門外漢すぎてわからないのですが、たぶんF1とかの方かな…と思います…たぶん。
EUROSPAR COOKBOOK OF THE YEAR 2018
An Post Irish Book Awardsの1部門であるEUROSPAR COOKBOOK OF THE YEAR 2018。
料理本が選ばれます。料理本がこういう文学賞で取り上げられるのって珍しい気がします。
An Post Irish Book Awardsについては↓
受賞作品
THE CURRABINNY COOKBOOK(by JAMES KAVANAGH & WILLIAM MURRAY)
The Currabinny Cookbook (English Edition)
- 作者: James Kavanagh,William Murray
- 出版社/メーカー: Penguin
- 発売日: 2018/09/27
- メディア: Kindle版
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伝統的な食材を大事にする著者2人がまとめたレシピ本。
著者はCurrabinnyというファーマーズマーケット、夕飯の集いなどといった事業を展開しているようです。あらすじに乗っていた「林檎とローズマリー、バターミルクのケーキ」がおいしそうです。
ノミネート作品
VEGAN-ISH(by HOLLY WHITE)
Vegan-ish: A Gentle Introduction to a Plant-based Diet (English Edition)
- 作者: Holly White
- 出版社/メーカー: Gill Books
- 発売日: 2018/08/31
- メディア: Kindle版
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ヴィーガン(絶対菜食主義)の為のレシピ本。ダイエットとしてヴィーガニズムに興味のある人、これからヴィーガンになりたい人のために「どう食生活を変えていくか」「外食、買い物中にどう食べ物を選ぶか」といったアドバイス付き。
日本でもベジタリアンに続いて若干浸透してきた言葉でしょうか、ヴィーガン。絶対菜食主義と訳したの…かっこよくないですか…。ともかく、ヴィーガン食=まずいという偏見があるそうで。この本ではそれを覆すべく100を超えるおいしそうなレシピを載せてくれているとのこと。
THE HAPPY PEAR: RECIPES FOR HAPPINESS(by DAVID & STEPHEN FLYNN)
The Happy Pear: Recipes for Happiness (English Edition)
- 作者: David Flynn,Stephen Flynn
- 出版社/メーカー: Penguin
- 発売日: 2018/05/03
- メディア: Kindle版
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ベジタリアンのレシピ本。15分以内に作れる料理やちょっと豪華な日のディナー、さらにはデザートまでのカテゴリでそれぞれレシピを紹介している。
著者は双子だそうです。ヴィーガンに続いてベジタリアンとは。昨今の流行なのでしょうか。
DONAL’S MEALS IN MINUTES(by DONAL SKEHAN)
Donal's Meals in Minutes: 90 suppers from scratch/15 minutes prep (English Edition)
- 作者: Donal Skehan
- 出版社/メーカー: Hodder & Stoughton
- 発売日: 2018/09/06
- メディア: Kindle版
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6章立て、全90レシピの手早く作れる夕食を紹介。
時は金なり、何かと時間に追われる現代人……と使い古された言い回しをしてしまいたくなります。忙しいのはアイルランドも同じなのか、ささっと作れるレシピ集がノミネートされました。実際、日々の役に立つのはこういうレシピの方なんですよね。
HOW TO EAT A PEACH(by DIANA HENRY)
How to Eat a Peach: Menus, Stories and Places
- 作者: Diana Henry
- 出版社/メーカー: Mitchell Beazley
- 発売日: 2018/05/01
- メディア: ハードカバー
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「春夏」「秋冬」の2章立てで季節の食べ物を使ったレシピ集。それぞれのメニューに著者の思い出を振り返るエッセイ付き。
題名からしてすごいニッチなレシピ集じゃん…と思っていましたがそうではなかった。プレスリリースに載っているサンプルだとアプリコットタルトなどの素朴でおいしそうな料理が並んでいる印象でした。
NEVEN MAGUIRE’S HOME ECONOMICS FOR LIFE(by NEVEN MAGUIRE)
Neven Maguire's Home Economics for Life: The 50 Recipes You Need to Learn
- 作者: Neven Maguire
- 出版社/メーカー: Gill Books
- 発売日: 2018/09/14
- メディア: ハードカバー
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料理未経験の人のために集めた50のレシピ。トマトソースの作り方からスクランブルエッグのきれいな作り方、簡単ケーキまで。
1ステップごとに懇切丁寧な説明がしてあるとのことで、料理下手、素人には非常に嬉しいレシピ集です。私も必要に迫られてしぶしぶ料理をする時はもっぱらベターホームの「家庭料理」を参考にしているのですが、今流行りのレシピ集って料理上級者向けで手が出ないんですよね。
以上、ノミネート作品でした。食べる専門でいたいと常思ってはいるものの、ヴィーガンやベジタリアンのレシピ集はかなり気になります。こういうのがノミネートされるのも多様性というか、今の流れがわかっておもしろいですね。時短系・初心者系のレシピがノミネートされているのも象徴的。
レビュー:窓辺のキャンドル
本について
ジャンル:エッセイ、クリスマス
ページ:253 全18章
あらすじ
アイルランド、コーク地方に住む著者が、子どもの頃に経験したクリスマスと、大人になった現在のクリスマスの思い出を綴ったエッセイ。白黒の写真と共に、伝統的なアイルランドのクリスマス風景が描かれている。
感想
粛々としたクリスマス
クリスマスと言えば何を思い浮かべるでしょうか。ケーキとフライドチキン、BGMにイルミネーションと賑やかな想像をしてしまいます。
でも、この本の中でそうしたクリスマスはほぼ出てきません。本の感想として適切なのかどうなのか、とても静かな雰囲気のある文章でした。古くて寒い家の中、暖炉の近くは暑いなあと思いつつちょっと離れると寒いから我慢して、テレビも何もない空間、著者の話を穏やかに聞いている。そんな気分に浸ることができました。きっと著者が静けさを愛しているからなのでしょう。文章の端々からそれを感じました。
さて、この本で描かれるクリスマスは2つあります。1つ、著者が子どもの頃に経験した伝統的なクリスマス。2つ、大人になってから著者がイニシャノン村で自ら飾り付け祝うクリスマス。前者は、子どもの著者にとって大人から与えられるクリスマスです。母の作るいつもより豪華な夕飯だとか、普段厳格な父の様子だとか。子どもが出来ることはクリスマスカードを書く手伝いをしたり、ちょっとした飾り付けをしたりするくらいのものです。それを著者はとても楽し気に描くんですよね。子どもからしたらクリスマスは特別です。ノスタルジックな文章に、子どもの頃のときめきを思い出しました。いつから私にとってクリスマスは特別でない、ただの365分の1日になってしまったんでしょうか。サンタさんが来なくなってからかな。
対して後者、著者は能動的にクリスマスの準備をします。どこに何を飾りつけようか、飾りに苔を使ったらうまくいくんじゃないかなど考え考え、家をクリスマス仕様にしていきます。ゲストハウスに行ってクリスマスの飾りつけを参考にしているのだからもう筋金入りでは?
何より、クリスマスの準備中、著者は色々な人に思いを馳せます。料理を作っては母親のものと比べたり、飾りをくれた親戚・友人を思ったり。1年に1度、段ボールから飾りを出して家中をクリスマスに変え、近しい人たちとの思い出を振り返る。こうした準備期間こそが最も尊く、クリスマスらしい時間なのかもしれません。
なにより、大人になってもクリスマスは特別に出来るのだと教えてもらいました。
著者の人柄
エッセイを読む時って、著者の人柄が自分に合うかどうかが大事になると思っています。ひたすら友人の話を聞いているのと同じ感じで、話の持っていき方が自分の思考の流れと合っているとか、単純に興味が同じとか、逆に全く違って面白いとか。
その観点でいくと、著者アリス・テイラー氏はチャーミングで飽きない話術を持った魅力的な人でした。自らの幼少期の思い出、クリスマス、住んでいる地域を愛していることが文章の端々から伝わってきて、愛情深い人なのだろうなあと思います。基本的にずっと1人でクリスマスの飾りつけをしている彼女が、ああでもないこうでもない、そういえばこれってどうなんだろう?と思考をユーモアたっぷりに展開していく様がとても好きでした。1人で楽しめる人って良い。
著者・訳者について
アリス・テイラー
北コーク生まれ、結婚後にイニシャノンに移る。今作もコークやイニシャノンでのクリスマスがメインに話されています。ノスタルジックな作風で知られているようです。
高橋歩
新潟出身。アイルランド関連の本を精力的に翻訳されています。
1月試し読みまとめ
Violet Hill
ジャンル:ミステリー、歴史
ページ:352
あらすじ:1918年12月、ロンドンで唯一の女性私立探偵Violet Hill(ヴァイオレット・ヒル)はサー・アーサー・コナン・ドイルの管財人から依頼を受ける。2018年1月、Susanna(スザンナ)は特殊な能力がある警官だったが、あることからその力を失ってしまう。2つの時代を巡るミステリー。
物語は1918年パートから始まります。クリスマスの描写がとても良かった。
Echoes of Grace
Echoes of Grace (English Edition)
- 作者: Caragh Bell
- 出版社/メーカー: Poolbeg Press
- 発売日: 2019/01/02
- メディア: Kindle版
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ジャンル:家族、ミステリー
ページ:1,564
あらすじ:Aurora(オーロラ)は父とナニーとで田舎の豪邸に暮らしていた。母Grace(グレース)は自分が生まれた時に亡くなったという。大きくなるにつれ、母の生き写しになっていくAurora。同時に、母に隠された秘密が明らかになる。
ページ数嘘だろ……。その分、試し読みもものすごく長かったです。そしてAuroraがとてもかわいい。田舎で甘やかされて暮らしているのと、父からパソコンやスマホを渡されていないせいで世間知らずの割に大人びたものが好きなアンバランスな子になってしまいました。そんなAuroraに同情するJamesとの関係が微笑ましくて良かった。
IRELAND AM POPULAR NONFICTION BOOK OF THE YEAR 2018ショートリスト
An Post Irish Book Awardsの1部門であるIRELAND AM POPULAR NONFICTION BOOK OF THE YEAR 2018。
ノンフィクションが選ばれます。
An Post Irish Book Awardsについては↓
受賞作品
THE COW BOOK(by JOHN CONNELL)
The Cow Book: A Story of Life on a Family Farm (English Edition)
- 作者: John Connell
- 出版社/メーカー: Granta Books
- 発売日: 2018/03/01
- メディア: Kindle版
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牛の歴史をたどると共に、農家の日常、そして作者と家族との関係性を描いたノンフィクション。
以前試し読みだけしました。
牧歌的な文章が印象的でした。
ノミネート作品
TONY 10(by DECLAN LYNCH & TONY O’REILLY)
ギャンブルに勝つ快感が、Tony O'Reillyの人生を変えてしまった。ネット上のアカウント名Tony 10。後に彼は175万ユーロを盗んだとして新聞の一面をにぎわすことになる。ギャンブルで全てを失った男の半生を描いた話。
以前試し読みました。ドキュメンタリー風の描写で読みやすかったと記憶しています。
HELP ME!(by MARIANNE POWER)
Help Me!: One Woman's Quest to Find Out if Self-Help Really Can Change Her Life (English Edition)
- 作者: Marianne Power
- 出版社/メーカー: Picador
- 発売日: 2018/09/06
- メディア: Kindle版
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自己啓発本って本当に役に立つのか?ある日疑問に思った著者が1年間、月に1冊ずつ本のアドバイス通りに過ごしてみた結果を綴る。
賞のサイトで試し読みができたのでちらっと読みました。その書き出しがざっくり言うと「女性には人生思い通りにいかねえな~と思う日が必ず来る。二日酔いで目覚めた日曜の朝が私にとってのその日だった。」最高じゃないですか。
THE SKIN NERD(by JENNIFER ROCK)
肌は必要によって栄養分を与え、守り、ケアしなければならない。スキンケアの専門家である著者が人生のステージごとのスキンケア方法をまとめたもの。
気になります。アンチエイジングからアクネケアまであると書いてありました。私もお肌の曲がり角を実感する年頃でありますので、ものすごい購買意欲をかきたてられました。
PLAY IT AGAIN, DES(by DES CAHILL)
Play It Again, Des: Des Cahill: My Autobiography (English Edition)
- 作者: Des Cahill,Mary Hannigan
- 出版社/メーカー: Sport Media
- 発売日: 2018/09/27
- メディア: Kindle版
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アイルランドで最も有名で人気のある芸能人が自身のキャリアに対してつづった自伝本。
Broadcasterってなんて日本語にすればいいんだ…。自伝ではありますが、Irish Timesの記者が取材し、自伝という形に書き起こしたようです。
BORN FOR THE ROAD: MY STORY SO FAR(by NATHAN CARTER)
Born for the Road: My Story So Far (English Edition)
- 作者: Nathan Carter
- 出版社/メーカー: Penguin
- 発売日: 2018/09/27
- メディア: Kindle版
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人気カントリーミュージシャンの著者の自伝。幼い頃からどのように音楽に触れ、そして成功に至ったのか。
1990年生まれ、28歳です。この年でアルバムをばんばん出し、冠番組は大盛況とスーパースターじゃないですか。
以上、ノミネート作品です。自伝が多いかと予想していたものの、実際には体験談やHow to本なんかもノミネートされていますね。受賞作品は、さすが牛強しということでしょうか。アイルランドの本を読んでいると頻繁に出て来ますもの、牛と草原。
レビュー:The Weight of a Thousand Feathers
本について
The Weight of a Thousand Feathers (English Edition)
- 作者: Brian Conaghan
- 出版社/メーカー: Bloomsbury YA
- 発売日: 2018/06/14
- メディア: Kindle版
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ジャンル:YA、介護、LGBT
ページ:320 全60章
あらすじ
Bobby(ボビー)は高校に通いながらも、難病に侵された母の介護を行っていた。加えてまだ幼い弟の面倒まで見ている。家族のこと、自身の将来のこと、そして自分の指向のこと。様々な悩みを抱えるBobbyは、ある時、親の介護をする若者の集まりに行きアメリカ風に話すLou(ルー)に出会う。
登場人物
Bobby Seed(ボビー・シード)
主人公、17歳。学校に通うかたわら、母の看病・介護をし、弟Dannyの面倒も見ている。家族のことは愛しているが、日々に疲れてもいる。また自分自身、誰にも言えない悩みを抱えていた。
良い子です。聖人君子かっていうくらい良い子なんです。それだけにBobbyが悩み苦しんでいる時はこっちも辛い気分でした。なぜこんなに苦しい目に合わなければならないのかと。物語はBobbyの1人称で進んでいきます。詩的センスのあるBobbyの文章は美しく読んでいて気持ちが良かった。
Mum(ママ)
BobbyとDannyの母。MS(多発性硬化症)という難病にかかり、ほぼ寝たきりになっている。身体がどうにもならないことに苛立ちつつ、息子らへの愛は強い。
Danny Seed(ダニー・シード)
弟。正式名Daniel(ダニエル)なので、Dannyと呼ばれたりDan(ダン)と呼ばれたりしています。学校に行きたがらない、制服をちゃんと洗わないなどBobbyの悩みの種でもあります。あとXboxのゲームが好き。
こうして客観的に書くとむかつく弟ですが、作中ちょこちょこかわいいです。Bobbyの具合が悪い時ママのように寝たきりになるんじゃないかと心配して傍から離れない、とか。
Bel(ベル)
Bobbyの親友。美少女だがBobbyは全く恋愛対象として見ていない。性格は大雑把でよくBobbyをからかって遊んでいる。
Lou(ルー)
親の介護をする子どもたちの会Pozitiveで出会ったアメリカ風の英語を話す少年。古いベスパに乗っている。ウィンクを乱用する。
良い意味でも悪い意味でも、Bobbyに多大な影響を与えることになります。
物語補足
gear
gearというと通常「歯車」を意味します。作中でも何度かこの単語は登場するのですが、全て「歯車」という意味ではありません。Oxford Dictionary(gear | Definition of gear in English by Oxford Dictionaries )によれば英国俗語で「違法ドラッグ」の意味を持っています。特にヘロインを指して言うそうです。
ヘロインといえばダウナー系のドラッグであり、最も依存度が高いとされています。こんなのヤングアダルトの本で登場させて大丈夫なんでしょうか。
感想
I am who I am
というのが、この小説のテーマだったと思います。主人公Bobbyはもちろん、ママをはじめとした登場人物みなが「自分とは何か」「本当の自分」という問題に向き合っていました。
Bobbyは良い子です。ママの看護介護を行った疲れで、学校では寝てしまう。DannyはBobbyの苦しみを共有するには幼すぎる。将来のことも考えなくてはいけないし、何より自分自身が人に言えない秘密を抱えている。これでよくぞ逃げ出さなかった。Bobbyが自身の状況を指して「A thousand feathersの重みが肩に圧し掛かる」と言ったのは、真綿で絞殺されるような日常を見事に表していました。
誰かに理解してもらいたい、悩みを聞いてほしいと普通なら思ってしまうでしょう。けれどBobbyは全てを1人で背負おうとし、結局自分の秘密を読者にすらはっきり明かすことはありませんでした。ただ普通に推測できるレベルには描写されていました。
Bobbyのような状況にいる子どもはそんなに多くない…と思いたいのですが、本当の自分をさらけ出したら嫌われてしまうのではないか、今の自分は本当の自分なのかという悩みは思春期共通ではないでしょうか。その意味で、Bobbyは思春期の子たちに受け入れやすいキャラクターになっているのでは。
そしてママも「自分らしくある」ことに悩んでいきます。病気で身体がままならない彼女は、息子たちに母親らしいことが出来ないと常に苦しんでいます。息子を自分の介護で手一杯にさせていることに罪悪感もある。病気が悪化するばかりと察した時、ママは自分を保つためにある決断をします。それがまたBobbyを苦しめもするのが何とも言えない。ママの決断は息子たちへの愛にあふれていましたが、結局人間は死ぬまで自分本位であるしかないのかもしれません。
医療が発達しても完治できない病気はあります。ただ技術の進歩により生きながらえることは出来るようになった。記憶を失っても、身動きが出来なくても、話せなくても、思考できなくても、それは私だと言えるのか。その時に「私」を私はどう定義して生きるのか。とても難しい問題だと思います。
著者について
Brian Conaghan
スコットランド生まれ、現在は拠点をダブリンに置く。スコットランド、イタリア、アイルランドで教鞭をとっていた。2016年にコスタ賞を受賞している。