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アイルランドの本(小説・児童書・YA)を紹介するブログです。

3月試し読みまとめ

A Short History of the IRA 

A Short History of the IRA: From 1916 Onwards (English Edition)

A Short History of the IRA: From 1916 Onwards (English Edition)

 

ジャンル:歴史、ノンフィクション

ページ:224

あらすじ:IRAアイルランド共和軍)の歴史を綴った本。成り立ちから組織の目的、行動理念などを過去から2018年までたどる。

1つひとつが項目立てになっていて読みやすいです。たとえば初っ端はイースター蜂起の章になっています。結構緩急のある文章で飽きさせません。The O'Brien Pressは歴史モノの本を頻繁に出しているので信頼感がありますね。

Jott 

Jott: A John Murray Original (English Edition)

Jott: A John Murray Original (English Edition)

 

ジャンル:友情、精神

ページ:304

あらすじ:1935年2月、アイルランド人であるArthur(アーサー)とLouis(ルイス)は連れだって精神病院の庭を散歩していた。2人は幼い頃から友人だったが、今の立場は全く違う。医師見習いのArthurと患者であり作家でもあるLouis。モダニズムや戦争が迫る時代の友情と狂気の話。

冒頭のお散歩シーンが「こころ」のKと先生のと重なって見えました。性格も、トラブルメーカーだが才能あふれるLouisとそれに振り回されつつ親友として大事に見ているArthurと、何となく似通っているような。落ち着いた文体ですらすら読めます。

For the Good Times 

For The Good Times (English Edition)

For The Good Times (English Edition)

 

ジャンル:IRAアイルランド、若者

ページ:368

あらすじ:1970年代、ベルファスト北部の街ArdoyneでSammy(サミー)は暮らしていた。日々を友人3人と過ごしているSammyだったが、ある女性との出会いが日常を変えていく。IRAについて新たな側面から描く。

ジャンル:アイルランドってどうなんでしょう。でもそれ以外何と表現したらいいのか。 あらすじも色々な要素があって書ききれません。ロックミュージックやらファッションやら暴力やら性やら。Ardoyneは昨年ブッカー賞を獲ったAnna Burnsが育った街であり、カトリック色が強いエリアでもあります。文体はすごく……若者です……。ころころ話題が変わる。

Waterford Crystal 

ジャンル:ノンフィクション、歴史、工芸品

ページ:300

あらすじ:世界的に有名なウォーターフォード・クリスタルウォーターフォードの地でガラス工芸がどのように始まり、ブランド化されていくに至ったのか歴史を写真付きで解説した本。

恥ずかしながらウォーターフォード・クリスタルというブランドをこの本で初めて知りました。写真がふんだんに使われていて、その美しさに驚きます。ウェストミンスター寺院のシャンデリアもウォーターフォード・クリスタルだそうです。本文はかなり詳しいところまで取材してあってガラス工芸の始まりから職人の家事情まで丸裸です。表などもあり、当時どのくらいで取引されていたのか知ることができるのも良い。

Dirty Little Secrets 

ジャンル:サスペンス、サイコスリラー

ページ:400

あらすじ:Withered Valeに住む住人は、金、地位、名誉、全てを持っていた。ある時、住人の1人Olive Collinsが遺体となって発見される。他の住人6組はお互いがOliveの死に対して何らかの隠し事や得をしていると思っていた。

アイルランドではミステリー作家として安定の人気を誇るJo Spainの新作。語り口が斬新でした。死体は語る、と言えばいいのか…。サスペンスのはずなのに妙に軽い感じの文章なんですよね。去年のThe Confessionとはまた違う雰囲気でした。

Taney:Progress of a Parish 

Taney: Progress of a Parish (English Edition)

Taney: Progress of a Parish (English Edition)

 

ジャンル:歴史、教会

ページ:192

ダブリンにある教区Taneyの歴史や文化、発展を描いた本。

当時の記事や昔に書かれた歴史本からの引用もある、通俗史です。Taneyはダブリンのダンドラムにある、有名な教区なのだとか。写真がたくさん掲載されています。雪の中の教会を映して「めちゃかわいい」とコメントが付いてるのが愛情を感じて良い。