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アイルランドの本(小説・児童書・YA)を紹介するブログです。

Dublin Literary Award2018ショートリスト

Dublin Literary Awardとは

年に1度発表される国際的な文学賞。英語で出版された、あるいは英語に訳された本がノミネート対象になります。

英語で書かれた本であれば、2016年1月1日~同年12月31日までに出版されたもの。他言語であれば、2012年1月1日~2016年12月31日までに原作が出版され、2016年1月1日~同年12月31日までに英語へ翻訳出版されたもの、が今年は対象になるそうです。

今年で23年目。国際的文学賞ですがダブリンに拠点を置く企業とダブリン市図書館などの後援を受けているためこの名称になっています。

公式HPはこちら→International DUBLIN Literary Award

日本語のWikiありました→国際IMPACダブリン文学賞 - Wikipedia

ショートリスト作品

Baba Dunja's Last Love(著:Alina Bronsky) 

ドイツ語からの翻訳。翻訳者はTim Mohr。

チェルノブイリが故郷のBaba Dunjaという女性の後年を描く物語。

画像がなぜか出てこなかったのですが、かわいらしい&意味深な表紙です。

The Transmigration of Bodies(著:Yuri Herrera) 

The Transmigration of Bodies

The Transmigration of Bodies

 

スペイン語からの翻訳。翻訳者はLisa Dillman。

スペインのアングラな世界を書いた犯罪小説。ダークヒーローもの。

The Unseen(著:Roy Jacobsen )

The Unseen: SHORTLISTED FOR THE MAN BOOKER INTERNATIONAL PRIZE 2017 (English Edition)

The Unseen: SHORTLISTED FOR THE MAN BOOKER INTERNATIONAL PRIZE 2017 (English Edition)

 

ノルウェー語からの翻訳。翻訳者はDon Bartlett・Don Shaw2名。

小さな島に暮らすある家族をめぐる物語。

Human Acts(著:Han Kang)

Human Acts

Human Acts

 

 韓国語からの翻訳。翻訳者はDeborah Smith。

1980年の光州事件を元にした物語。著者はブッカー賞受賞で一躍有名になったハン・ガンですね。

他言語のものの英訳から、邦訳された同作品を探すのは非常に難しかったのですが…恐らくあらすじから見て『少年が来る』という題で邦訳出版されています。

少年が来る (新しい韓国の文学)

少年が来る (新しい韓国の文学)

 

The Lesser Bohemians(著:Eimear McBride ) 

The Lesser Bohemians (English Edition)

The Lesser Bohemians (English Edition)

 

 アイルランド出身、女優志望の18歳の女の子が運命の人に出会うのを夢みてロンドンへやってくる話。

Solar Bones(著:Mike McCormack) 

Solar Bones

Solar Bones

 

 死者が蘇る日の話。

 Distant Light(著:Antonio Moresco ) 

Distant Light

Distant Light

 

イタリア語からの翻訳。翻訳者はRichard Dixon。

山奥で孤独に住む男と、森の中に1人で暮らす少年の話。

Ladivine(著:Marie Ndiaye) 

Ladivine (English Edition)

Ladivine (English Edition)

 

フランス語からの翻訳。翻訳者はJordan Stump。

3世代にわたる親子の話。

作者マリー・ンディアイの小説はいくつか邦訳されていますが、今作は未邦訳のようです。

 The Woman Next Door(著:Yewande Omotoso )

The Woman Next Door: A Novel

The Woman Next Door: A Novel

 

 ケープタウンに暮らすお隣さんを描いた物語。汝の隣人を愛せよ、がテーマみたいですね。

ちなみに、実際のノミネートはChatto & Windusから出版されたものですがamazonに画像が見当たらなかったので上記画像は別の出版社のものを使用しています。

My Name is Lucy Barton(著:Elizabeth Strout) 

My Name Is Lucy Barton: A Novel

My Name Is Lucy Barton: A Novel

 

ニューヨークで入院しているルーシーを主人公にした連作短編集。

著者エリザベス・ストラウトは日本でも有名なのではないでしょうか。今作も邦訳されています。

私の名前はルーシー・バートン (早川書房)

私の名前はルーシー・バートン (早川書房)

 

英訳本の位置

ショートリスト11作中6作が外国語(英語外)からの翻訳です。自分の知識が古くて恥ずかしいのですが、かつて英語圏での翻訳というとひどいものが多いとされていました。誤訳も多いし内容が変わってしまっていることもしばしば。何より翻訳者の地位が低く、名前さえ本に載せてもらえないことが普通だったとか。

今回は翻訳者の名前がガッツリ載っていましたし、ここ数年でだいぶ英語圏の翻訳事情も変わったのかもしれません。

ヴァルター・ベンヤミンはかつて、翻訳とは作品を今に蘇らせ「死後の生」とすることでそれを名作に押し上げるのだと述べました。また、全く原作に忠実な翻訳など不可能であるとも。(「翻訳者の使命」)

上記を見ても、ショートリストにのるほどいい作品とされているのに、邦訳が出ている小説はごくわずかです。英語圏の翻訳が充実するのは、より多くの読者を獲得するという意味でいいことなのでしょう。そして原作語が読めない私にとっても。

受賞作は6月13日に発表されます。それには間に合わないまでも、ショートリスト作品、少しずつ読んでいきたいと思います。