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アイルランドの本(小説・児童書・YA)を紹介するブログです。

THE LOVE LEABHAR GAEILGE IRISH LANGUAGE BOOK OF THE YEAR 2018ショートリスト

An Post Irish Book Awardsの1部門であるTHE LOVE LEABHAR GAEILGE IRISH LANGUAGE BOOK OF THE YEAR 2018。

今年創設されたジャンルです。対象はゲーリック(アイルランド語)で書かれた本。

An Post Irish Book Awardsについては↓

rokuyon64.hatenablog.com

受賞作品

Tuatha Dé Danann(ag Diarmuid Johnson)

www.leabharbreac.com

amazon.jpで取り扱いがないので出版社のリンクでも…と思ったらHTMLが丸見え。かつ品切れ。

題名から分かる通り、ケルト神話よりトゥアサ・デー・ダナンの話を現代アイルランド語で語りなおしたもの。「マグ・トゥレドの戦い」を扱ったものだそうです。

第1回目の受賞としてこれほどぴったりなものはないんじゃないでしょうか。

ノミネート作品

Fuascailt an Iriseora(ag Michelle Nic Pháidín)

www.coislife.ie

主人公Brídはジャーナリスト。首都に戻った彼女をトラブルが襲う。

シリーズ物2作目のようです。お仕事小説。

Lámh, Lámh Eile(ag Alan Titley)

www.cic.ie

探偵Shamusは、夫の手だけが入った箱を持った妻に、夫の行方を捜して欲しいと依頼される。次々と見つかる夫の体の一部。一体誰が何の目的で行っているのか?ハードボイルド・ミステリー。

表紙が昔のアメコミ風だったので明るい内容かなと想像していたら予想外の重めミステリーでした。

Luíse Ghabhánach Ní Dhufaigh: Ceannródaí(ag Celia de Fréine)

www.litriocht.com

アイルランド語復興運動に活躍したLuíse Ghabhánach Ní Dhufaigh(英語名:Louise Gavan Duffy)の伝記。

実はLuíse自身も若い頃はアイルランド語を話せなかったそうです。何とも、アイルランド語で書かれたこと自体に意義があるような作品ですね。

Táin Bó Cualaigne(ag Darach Ó Scolaí)

www.leabharbreac.com

ケルト神話より「クアルンゲの牛獲り」の翻訳。表紙がこわーい。今やすっかり有名になったであろう英雄クー・フーリンの物語です。アイルランドでも人気のあるお話だとか。

アイルランド語アイルランド語の翻訳に意味があるのか?と思われるかもしれませんが現代語訳「源氏物語」みたいなものです。

Teach an Gheafta(ag Cathal Ó Searcaigh)

www.leabharbreac.com

ある若い男がドニゴールのゲールタハトで過ごしたひと夏の物語。

非常にユーモアのある、詩的な小説と賞賛されていました。

 

以上、ノミネート作品です。神話の翻訳やリライト、伝記など伝統的なものと新しい物語がバランスよく選ばれている印象でした。正直に言って、アイルランド語は難なく読める人が少ない言語です。広く読んでもらうなら今の世界では英語で書くのが一番でしょう。その中で、アイルランド語で執筆する、という意義を作者それぞれがどう考えるのか。少し日本語に通じるものがある気がします。日本は国内需要が圧倒的なのでまた違うのかもしれませんが。

それと個人的には、地域によって表現や綴りが変わってくるアイルランド語でどうやって小説書くの?と思わなくもありませんでした。綴りはまあ、標準アイルランド語なのかしらんと考えつつ。ただこういう賞でアイルランド語の小説が取り上げられるのはいいですね。私のような学習者は「この本が読んでみたい」と学習意欲に繋がります。

難点は日本だと手に入りにくいことでしょうか。あと賞のサイトも、他の部門だと用意されている作品ごとの紹介ページがなく一行紹介のみでした。もう少し頑張ってくれてもよかったのではないか。