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アイルランドの本(小説・児童書・YA)を紹介するブログです。

レビュー:[映画]ローズの秘密の頁

映画について rose.ayapro.ne.jp

公開日:2018年2月3日(日本)

長さ:予告等含めて約2時間

ジャンル:ロマンス、大河、戦争(第二次世界大戦

あらすじ:ローズは50年近く精神病院に入院している女性であり、かつて生まれたばかりの自分の子どもを殺したと言われていた。病院が閉鎖になるにあたり、グリーン医師が再度ローズの状態を診察することになったのだが、彼女は自らの子どもを殺していないとして半生を語り出した。戦争、恋、別れと話を聞いていく中、グリーン医師と看護師はある真実に気が付く。

登場人物

過去編

ローズ・F・クリア

主人公。戦争で職を失い、北アイルランドからアイルランドのスライゴ(たぶん)でホテルを営む叔母の元へ疎開してくる。マイケル・マクナルティと恋に落ちるが、ゴーント神父含む他の男性からも言い寄られてしまう。プロテスタント

妊娠したまま海を泳ぐなどガッツがある。50年ほど精神病院に入れられてなお自分をしっかり保っていた精神的にも強い女性です。

マイケル・マクナルティ

酒屋の息子。ローズと恋に落ちる。第二次世界大戦がはじまり英国軍へ志願するため、ローズに待っていてほしいと言い残し村を出て行ってしまう。

商売人だから物を売るために英国に媚びを売っているとして村の一部からは嫌われていた。

ゴーント神父

ローズに惹かれアプローチする。その後マイケルとローズが結ばれてしまい失恋。嫉妬半分で彼の起こした行動がローズの人生を狂わせていくことになる。神父なのでカトリック

初見からずっと横浜DeNAベイスターズの井納翔一投手にしか見えず、最後まで憎めませんでした。顔が似てる。

現在編

ローズ・マクナルティ

主人公。50年近く精神病院に入院している。病院が取り壊され転院されるのに伴い、グリーン医師から再度評価を受けることになる。ずっと自分の赤ん坊を殺していないと主張していた。

看護師のケイトリンだけを信頼していたが、自分の話を聞いてくれたグリーン医師も信じるようになっていく。

ティーヴン・グリーン

ローズを診察する医師。スライゴには両親の家を売るために来ていた。荒唐無稽な話をするローズに辟易していたが、彼女が忘備録としていた聖書を見、再度話を聞くようになっていく。

英語版Wikipediaだとウィリアム・グリーンになっていました。おそらく小説版はウィリアムなのでしょう。映画版は名前を変えたのですね。真相を知った後だと、スティーヴンに変えたのも伏線とするためだったのかと思います。

ケイトリン

看護師。ローズのことを最初から最後まで信じていた唯一の人だと思います。まさに白衣の天使。制服は紺色ですが。

舞台

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舞台となるスライゴは上記色塗りした部分です。アイルランドでも北のほうですね。北アイルランドにいたローズにしたら割と来やすかったのかもしれません。

あまり単純な問題でもないですし、言い方もしたくないですが、ざっくりアイルランドにはカトリックが多く、北アイルランドにはプロテスタントが多いです。当然男女関係に対する考えも違いがあり、ローズが数人の男性を魅了して(気を引いていると思われて)しまったのはここら辺も関係しそうです。あとは単純に田舎へ都会の子が引っ越してきた感があったのかもしれません。東京の女ですね。ローズもローズで自衛しようぜとは思いますが。

なぜマイケルは嫌われていたか?

公式サイトにも若干書いてあるのですが、この時期のアイルランドは英国から独立して間もなく、かつまだ英国連邦に所属している形でした。そしてアイルランド島全体での独立を目指すIRAアイルランド共和軍)が激しい活動をしていた時期でもあります。

当然、これまで支配してきた英国に対して良い感情を持っていない人たちもいます。北アイルランドから来たローズに「どっちの味方だ?」と村人が聞いてきたのはそのためです。

対して、マイケルは英国に対してそう敵対心を抱いていなかったのでしょう。英国軍に志願するくらいですし。そして、英国軍に加入したマイケルはIRAや反英感情を持つ人たちから狙われることになります。史実でアイルランド軍から脱走して英国軍へ入った人がいるようですが、戦後公職につけないなど差別を受けたみたいです。

感想

月光

映画が始まってすぐにベートーベンのソナタ「月光」のアレンジ版のようなピアノ曲が流れます。その後月光は印象的なシーンでたびたび使われていました。全体的に音楽が良い。

しかし戦争がなければローズとマイケルは引き裂かれなかったわけで、その2人の思い出の曲がドイツ出身ベートーベンのものとは因果な感じがします。

愛の中で見えたもの

この映画を一言でいうなら「愛」です。ローズは言わずもがな、ゴーント神父の振る舞いだって愛ゆえにです。

映画の中でローズが「愛を込めて見えたものだけが真実」と言うセリフが出てきます。ローズの話が真実なのか、それとも辛い現実から逃げるために創作したものなのかわからないまま出てきたこのセリフ。

終わりまで見た今は、このセリフこそ作品で伝えたかったものだと思っています。

雰囲気は全体を通して暗め

題材が題材なのでこれはしょうがないですね。雰囲気的にはブラッド・ピット主演の「マリアンヌ」が近いような気がします。

それでもアイルランドの自然がたっぷり出てくるのでそれほど鬱々とした気持ちにはなりませんでした。ロケ地行ってみたい。

気軽に見に行ってください、と言える内容ではないですが、視聴後気持ちが暗くなることもなくとても良い作品でした。