レビュー:The Wickerlight
The Wickerlight (English Edition)
- 作者:Mary Watson
- 出版社/メーカー: Bloomsbury YA
- 発売日: 2019/05/30
- メディア: Kindle版
ページ:432
あらすじ
Zaraは数か月前にKilshambleに引っ越してきたよそ者である。ここで最愛の姉を亡くし、失意の中にいた。ある日、隠されていたメモを見つけ姉の死に疑念を抱くZara。メモを手掛かりに調査を進めていく中で、Zaraはドルイド同士の争いに巻き込まれてしまう。
一方、judgeとして役割を全うしていたDavidは一家に伝わる重要な宝「バズヴの眼」がなくなっていることに気がつき、独りで捜索を続けていた。
アイルランド神話を題材にした現代ファンタジーThe Wren Huntの続編。
前作の感想は↓
感想
ヤングアダルト小説の持つ役割とは何だろう。この本を読んでいる間、強くそれを意識した。
子どもから大人へ変わる途中。多くのことを感じ、考え、将来を見据え決断することだって増えるかもしれない。
何より、親との関わり方が変わっていく。
そして、この"The Wickerlight"は親と子の物語である。具体的に言って、子どもが親から離れていく過程を描いたものである。
私自身はヤングアダルト年代(日本では13歳~19歳)からだいぶ歳を重ねてしまったものの、おぼろげな記憶を思い返してもあの頃は何かと親に反発していた気がする。とにかく親と一緒にいるのが恥ずかしい、振る舞いが気に食わない、放っておいてほしい。
大体にして円満な家庭に育った私ですらそうだったのだ。この本に登場するZaraやDavidは余計複雑な気持ちだっただろう。
Zaraの両親は冷ややかな緊張状態にある。浮気を繰り返す父、そんな父に腹を立てつつ何だかんだとやり直しの機会を与えてしまう母。Kilshambleに引っ越してきたのだって父の女性関係を清算し、心機一転家族でやり直すためだった。
両親はそれで良かったかもしれないが、Zaraは都会から田舎へ、好きな人や親しい友人のいる土地から見知らぬ土地へ有無を言わさず連れてこられたのだ。それはもうたまったものではない。
おまけに、姉が死んでからというもの母は極端に過保護となり、Zaraの交友関係に口を出してくる。Zaraは両親に振り回されっぱなしである。姉がいた頃は2人で夜中に「ごっこ遊び」をしたり内緒話をしたりしてストレスも緩和されていたのだろうが、今やそれもない。
もう1人の主人公Davidも親との関係に悩まされている。ドルイド一族というのがまた事情をややこしくする。Davidはドルイド・judgeの1人で、トップのCassaの護衛を務める立場にある。CassaはDavidの叔母(母の妹)にあたる。父方の祖母はjudgeのトップになったCassaを見て「姉じゃなくて妹を嫁にもらっておけば良かった」などDavidに対し言う。個人的には子どもの前でそういう話をするんじゃありません!と思うものの、それはさておき、Davidの父方一族はCassaに対して微妙な感情を抱いている。ちなみにDavidの母は家の中で立場がない。これだけ聞くと何ともリアルというか、設定を置き換えれば実際にありそうな話である。
Davidはそんな複雑な立場で、Cassaへの忠誠心と親への従順さの板挟みになっていく。judgeとして、トップに仕えるのは当然。だがjudgeは血筋も大事にする。親の抑圧は、時に暴力ともなってDavidを困らせていた。
何というか、Davidは不運だ。前作ではWrenを追いかけまわし、敵対し、結局ちょっと良い所もある嫌な奴で終わっていた。ところが今作では兄弟の不始末の後処理をさせられ、身代わりに罰を受ける。judgeとaugurの敵対関係を知らないZaraに、女性のaugurとケンカしているところを目撃され「Davidは理由もなく女性に手をあげる人」と誤解されてしまうなど、理不尽にかわいそうなのだ。読んでいる内に応援したくなる苦労人っぷり。
さて、親に自由を奪われたZaraとDavidが出会うとどうなるか。
ZaraとDavidは共通点が多い。親との関わりに悩んでいるし、兄弟姉妹のために物語中は奔走している。そういえばこの小説はやたら兄弟姉妹が出てくるような気がする。
当然2人の交友には親の邪魔が入る。それでも2人は親の知らないところで親しくなっていく。Zaraに関して言えばDavidだけではない。親に秘密で築いた関係が後々彼女を助けることになる。
親に言えない・言わないことが増え、2人は自由を手に入れる。人はそうやって親離れ・大人への一歩を踏み出すのかもしれない。
前作とテーマは似ているように感じる。前作主人公Wrenは保護者の元から離れ、外の世界に触れることで自身の偏見や、ある意味洗脳とも言える保護者の教育から解き放たれた。
この"The Wren Hunt"シリーズは、ファンタジーをしっかりやりつつ、その大元にあるテーマは思春期の少年少女の独り立ちになっている。もしかしたら著者はヤングアダルト小説の役割をそこに見出しているのかもしれない。親との関係に悩むヤングアダルト世代の読者に対し、物語を通して「そこから抜け出して自立すること」「そしてそれは悪いことではない」と伝えているのではないか。
ではこの小説が教科書的かと言うと、全くそんなことはない。前作もそうだったが、著者のアイルランド神話に対する綿密な調査とそれを基に組み立てられた世界観は完成度が高く素晴らしい。現代社会とうまく融合されている。世間からひっそり隠れて木々を信仰し、自然を操り・読み解いているドルイドが本当にいるんじゃないかと信じたくなってしまうほどだ。
ドルイド(judge)の特殊能力も個人個人で差があって楽しい。例えばDavidなら虫に好かれる、指示を出せる能力を持っている。あまり「アタリ」の能力ではないらしいが、Davidはそれで何とかやっていくし、虫を慈しんでいるのも微笑ましい。
前作で物語の中に「変身譚」を散りばめ、最後に収束させていった一貫性は今回も遺憾なく発揮されている。今回の物語的中心が戦を司る女神バズヴだったことと、Zaraが一般人だったせいか多少そこらへんは分かりづらくなっていて、読み終わってから「あれはほのめかしだったのか?」と気がつくことが多かった。記憶があるうちにもう一度最初から読み直したいところではある。
前作では存在に言及されるだけだった第三勢力ドルイドbardが登場したり、Wrenが裏で何やら動いていたりと、さらなる続きが楽しみなシリーズである。
著者について
Mary Watson(メアリー・ワトソン)
ケープタウン出身、現在はアイルランドの西海岸に夫と3人の子と暮らす。YA小説を主に執筆。
2006年にThe Caine Prize for African Writing in Oxford受賞、2014年にはThe Hay FestivalのAfrica39 list of infuluential writers from sub-Saharan Africaに入る。
AVOCA COOKBOOK OF THE YEAR 2019ショートリスト
An Post Irish Bool Awardsのお料理本部門。料理本の部門が設けられているのは珍しいのではないか。
昨年に引き続き簡単・時短レシピが多くノミネートされている。買い物リストの作り方は日本のレシピ本にはない要素な気がする。
An Post Irish Bool Awardsについては↓
受賞作品
CORNUCOPIA: THE GREEN COOKBOOK(by TONY KEOGH, AOIFE CARRIGY, THE CHEFS OF CORNUCOPIA, DEIRDRE AND DAIRINE MCCAFFERTY)
Cornucopia: The Green Cookbook
- 作者:Tony Keogh,Aoife Carrigy
- 出版社/メーカー: Gill Books
- 発売日: 2019/10/18
- メディア: ハードカバー
ジャンル:ヴィーガン
ページ:326
著者:レストランCornucopiaで働く方達
去年もヴィーガンのレシピ本はノミネートされていたが、2019年でついに受賞作品をとるものが登場した。本のタイトルと同名の店は、アイルランドでも歴史あるヴィーガンレストランである。
砂糖やチョコレートを使ったスイーツのレシピも載っており、何となくイメージしていた「ヴィーガンの食事」とは大分かけ離れていた。あと豆腐は万能。
ノミネート作品
DONAL’S SUPER FOOD IN MINUTES(by DONAL SKEHAN)
Donal's Super Food in Minutes: Easy Recipes. 30 Minutes or Less. Good for you too! (English Edition)
- 作者:Donal Skehan
- 出版社/メーカー: Hodder & Stoughton
- 発売日: 2019/09/05
- メディア: Kindle版
ジャンル:時短料理
ページ:256
著者:4歳から料理を始める。家庭料理を専門とし、これまでに7冊レシピ本を出版している。
材料は最高でも10種類、かかる時間は30分以内と、とにかく簡単・素早く作れるレシピ集。レシピの見方や1週間の献立を4セット載せていてくれるのは料理初心者だけでなく日々忙しい人たちにも役立つのでは。
FROM THE OVEN TO THE TABLE(by DIANA HENRY)
ジャンル:簡単、オーブン料理
ページ:240
著者:フードライター。多数のコラム連載を持ち、ラジオ出演も多くこなしている。2018年も“ How to Eat a Peach”で本部門にノミネートされている。
仕事後に友人へ夕食を振る舞う場合やウェディング、祝日用など場面が詳しく設定されている。「鮭は値段が高いけどスピーディに作れる」といった身近な目線でレシピ説明を入れてくれているのも親近感が持てて好き。
CLODAGH’S SUPPERS(by CLODAGH MCKENNA)
Clodagh's Suppers: Suppers to celebrate the seasons (English Edition)
- 作者:Clodagh Mckenna
- 出版社/メーカー: Kyle Books
- 発売日: 2019/01/10
- メディア: Kindle版
ジャンル:生き方、ハウツー
ページ:208
著者:シェフ。ダブリンでレストランを経営している。Fortnum & Masonといった有名ブランドともコラボしている。
一緒に食事をするということは思い出を作るということ、との信条を持つ著者がどうやって買い物リストを作成するか、どのように栄養バランスの取れた献立を考えるかから実際のレシピ紹介までしてくれている。人によってはバイブルになるんじゃないだろうか…。レシピ数も120と圧倒的。
ONE POT FEEDS ALL(by DARINA ALLEN)
One Pot Feeds All: 100 new recipes from roasting tin dinners to one-pan desserts (English Edition)
- 作者:Darina Allen
- 出版社/メーカー: Kyle Books
- 発売日: 2019/09/19
- メディア: Kindle版
ジャンル:簡単料理、ワンポット
ページ:208
著者:アイルランドで最も著名なフードアンバサダー。料理学校も経営している。
レシピ分けがメイン食材ごとになっているので「これ安かったから買ったけどどうしよう」という時に最適では。ワンポットとはいえ様々なバリエーションがあってお得感がある。
CLEVER BATCH(by SUSAN JANE WHITE)
ジャンル:日常
ページ:304
著者:メディアでコラムを書く一方、自身のブログにもレシピを多数載せている。
日々の生活に寄り添ったレシピを紹介している。ただただ、写真の料理がめちゃんこ美味しそうである。Tipsとして「こうすれば値段も安いし簡単に作れる」とコメントが入っているのが嬉しすぎる。
IRISH INDEPENDENT CRIME FICTION BOOK OF THE YEAR 2019ショートリスト
An Post Irish Bool Awardsの犯罪小説部門。
今年は全てのノミネート作品で人が死んでいるという、どう捉えたらいいのか複雑な気持ちになる選出だった。とはいえ、世界観を大切に、細かい部分までこだわりが見える作品が多く、そちらについては流石のひと言。
An Post Irish Bool Awardsについては↓
受賞作品
CRUEL ACTS(by JANE CASEY)
ジャンル:探偵、殺人
ページ:368
あらすじ:1年前に2人の女性を殺害したとして仮釈放なしの終身刑に処されたLeo Stone。しかし裁判の結果に疑念があるとして再調査がMaeve Karriganに依頼された。ところが似たような状況で別の女性が行方不明となってしまう。模倣犯の仕業なのか、果たして。Maeve Kerriganシリーズ第8作。
著者:ダブリン生まれ。2010年に作家デビューして以来Maeve Kerriganシリーズを書き続けている。他、ヤングアダルトも書く。
8作目ともなればもう不動の人気シリーズだろう。書き出しも安定して面白い。ハラハラさせるような描写である。
ノミネート作品
THE HIDING GAME(by LOUISE PHILLIPS)
The Hiding Game (English Edition)
- 作者:Louise Phillips
- 出版社/メーカー: Hachette Books Ireland
- 発売日: 2019/09/05
- メディア: Kindle版
ジャンル:殺人
ページ:400
あらすじ:赤ん坊が死んだ時、近くにいたのは若いナニー(乳母)1人。逮捕されたナニーの弁護人となったHeather Baxterは、事件がそう簡単ではないと睨み調査を開始する。やがてHeatherは25年前に起こった母親の殺人と今回の事件の関連性を見出していく。
著者:ダブリン出身。心理犯罪小説を主に書いている。犯罪小説の創作を教える、文学賞の審査員を務めるなど文壇で活躍中。
冒頭が入れ子式に新聞記事となっていて、出だしからミステリの雰囲気が漂ってくる。やや硬めの文章も本格派っぽくて良い。
THE WYCH ELM(by TANA FRENCH)
ジャンル:家族
ページ:528
あらすじ:Tobyは楽観的な人だった。しかし強盗に襲われ、致死的ともいえる状況から生還した彼はその性格を一変しようと試みる。傷を癒す為、今は亡き叔父が住んでいた先祖代々の家へ引っ越してきたTobyは、そこの庭に頭がい骨が埋められているのを発見してしまう。
著者:ダブリン在住。エドガー賞や他の有名な賞を獲る人気作家であり、舞台女優としても活躍している。
冒頭がハムレットの引用というだけで期待大。出だしは主人公Tobyがいかに自分はツイているかと語る。1人称の文章からは知性が感じられるし、底抜けのおばかな楽観者というよりは善性が強い故の楽観さに見える。
TWISTED(by STEVE CAVANAGH)
Twisted: Don’t let murder get in the way of a good story (English Edition)
- 作者:Steve Cavanagh
- 出版社/メーカー: Orion
- 発売日: 2019/01/24
- メディア: Kindle版
ジャンル:殺人
ページ:320
あらすじ:この本を読む前に3つのポイントを知っておいてほしい。1.私は殺人の疑いで警察に追われている。2.誰も私のことを知らない。3.私が誰か分かったら、次は君の番だ。
著者:ベルファスト出身。法律を学ぶ。Eddie Flynnを主人公に据えたシリーズで有名。昨年も「Thirteen」で同部門のショートリスト入りを果たしている。
あらすじの情報が少なすぎてほぼそのまま訳したものを載せた。すみません…。
書き出しからエッとなり、著者名を二度見し、それからああなるほど、と納得した。こういう仕掛けは大好物である。試し読みだけでもしてみてほしい。
THE CHAIN(by ADRIAN MCKINTY)
ジャンル:誘拐
ページ:357
あらすじ:子どもが誘拐された。見知らぬ番号から電話が来る。曰く、電話相手の子どもも誘拐されたらしい。子どもを助ける方法はただ1つ、自身が24時間以内に他の子どもを誘拐してくることだった。さらに自分が誘拐した子どもの親にもまた他の子どもを誘拐させなければ自分の子どもは殺されるという。犯罪は連鎖してしまうのか。
著者:(エイドリアン・マッキンティ)ベルファスト生まれ。北アイルランド紛争時の刑事を主人公にしたショーン・ダフィシリーズが有名であり、邦訳もされている。
あらすじを書いているだけで「子ども」がゲシュタルト崩壊しそうになった。ルールが分かりづらいので整理すると、
A子が誘拐される→Aは24時間以内にB子を誘拐する→Bが24時間以内にC子を誘拐する→A子解放
という流れになる。Aが誘拐を拒否しても、Bが誘拐を拒否してもA子は殺される。不幸の手紙の実行版というやつになるのか。
今作は2月に邦訳が出る予定。出版の早川書房は他のエイドリアン・マッキンティの作品も出しているので納得である。
エイドリアン・マッキンティの「アイル・ビー・ゴーン」は以前ブクログにて感想を書いた。
REWIND(by CATHERINE RYAN HOWARD)
ジャンル:殺人
ページ:304
あらすじ:そのコテージのマネージャーは宿泊客の部屋にこっそりカメラを仕掛けていた。その日も唯一の宿泊客をカメラ越しに眺めていたら、不審者がやってきて客を殺してしまった。さらに犯人はこっそり仕掛けたはずのカメラまで破壊していった…。
著者:コーク生まれ。フランスやアメリカでの仕事を経て、専業作家に。最近はトリニティカレッジに通う学生でもある。
章の区切り毎にビデオの再生時間が書いてある。こういう世界観の構築が細部まで行き渡っている本はそれだけで好感度MAX。内容は宿泊客の死へ向かって真実が描かれていく、ひたひた背後から迫ってくる系ミステリーである。こういうのが1番怖い。
THEJOURNAL.IE BEST IRISH-PUBLISHED BOOK OF THE YEAR 2019ショートリスト
An Post Irish Book Awardsの1部門である、THE JOURNAL.IE BEST IRISH PUBLISHED BOOK OF THE YEAR。
アイルランドについて書かれた本が対象となる。今年は去年もノミネートされていた作品のシリーズが多い気がする。
An Post Irish Book Awardsについては↓
受賞作品
CHILDREN OF THE TROUBLES(by JOE DUFFY & FREYA MCCLEMENTS)
ジャンル:歴史
ページ:464
あらすじ:9歳のPatrickは将来司祭になるのが夢だった。しかし15歳の夏、彼は「Trouble」によって殺された初の子どもの犠牲者となってしまった。100組以上の家族にインタビューし、知られざる犠牲を明らかにした。
著者:Joe Duffy…テレビ司会者。Freya McClements…ジャーナリスト、プロデューサー。主に北アイルランドで活躍する。
「Trouble」はIRAの名が有名になった北アイルランド問題のことだ。簡単に言って北アイルランドの所有を主張する英国と、アイルランド島の統一を目指す統一支持者の地域紛争である。本には最初に犠牲となったであろう子どもたちの顔写真と、名前や享年が書かれており、それだけで胸にくるものがある。本文も事実や家族の証言を淡々と載せているだけなのが、一層悲惨さを訴えてくるように思える。犠牲になるのはいつも名も無き弱者なんだよな…。
ノミネート作品
IRELAND THROUGH BIRDS(by CONOR W. O’BRIEN)
Ireland Through Birds: Journeys in Search of a Wild Nation (English Edition)
- 作者:Conor W. O'Brien
- 出版社/メーカー: Merrion Press
- 発売日: 2019/10/17
- メディア: Kindle版
ジャンル:鳥、紀行
ページ:201
あらすじ:アイルランドに生息する12種類の鳥を紹介する。著者がアイルランド中を、季節を通して旅して調査した記録。
著者:Birdwatch Irelandのメンバーの1人。
著者の情報がほとんど出て来なくて焦る。本の最初に、「これは鳥の本であるが、場所の本でもある」と書かれている通り、鳥に出会った場所についてもかなり詳しく、情緒豊かに描写してある。
BEAUTIFUL AFFAIR(by MIKE HANRAHAN)
Beautiful Affair: A Journey in Music, Food and Friendship (English Edition)
- 作者:Mike Hanrahan
- 出版社/メーカー: HarperCollins
- 発売日: 2019/10/03
- メディア: Kindle版
ジャンル:音楽、伝記
ページ:304
あらすじ:ミュージシャンであり料理好きでもある著者が自身の半生とともに1970年代から現代までの音楽やアイルランドの家庭料理の流れを振り返る。
著者:クレア出身。ギタリストとして複数のバンドで活躍。シンガーソングライターでもある。表題“Beutiful Affair”は自身最大のヒット曲でもある。
語り口軽やか、1章ごとが短く非常に読みやすい文章である。かわいらしい挿絵や、著者と家族の写真がふんだんに使われていて、日記を読む感覚で進められる。さらに著者が母や祖母から習ったレシピまで載せてくれていて実用性も文句なし。あらすじでは「料理好き」と書いたが、著者は料理を学びんでいたくらいなのでほぼプロと言ってもいいだろう。
DARE TO DREAM – IRISH PEOPLE WHO TOOK ON THE WORLD (AND WON!)(by SARAH WEBB)(ILLUSTRATED by GRAHAM CORCORAN)
Dare to Dream: Irish People Who Took on the World and Won!
- 作者:Sarah Webb
- 出版社/メーカー: O'Brien Pr
- 発売日: 2020/01/19
- メディア: ハードカバー
ジャンル:人物、歴史
ページ:64
あらすじ:小さな島国アイルランドから、世界に羽ばたいていった人々を紹介する。独立運動の指導者マイケル・コリンズから女性労働組合の立ち上げメンバーロージー・ハケット、ケルト文化復興に尽力したグレゴリー夫人。南極探検家トム・クリーンなど。
著者:子ども向けから大人向けまで幅広く書く。10歳前後の子ども向けシリーズ「Ask Amy Green」が人気。
去年は同シリーズで活躍したアイルランドの女性を紹介する本がノミネートされていた。64ページと絵本にしては長めだが、イラスト付きで国の歴史が学べるのはいい。
A HISTORY OF IRELAND IN 100 WORDS(by SHARON ARBUTHNOT, MÁIRE NÍ MHAONAIGH, GREGORY TONER)(ILLUSTRATED by JOE MCLAREN)
A history of Ireland in 100 words (English Edition)
- 作者:Sharon Arbuthnot,Máire Ní Mhaonaigh,Gregory Toner
- 出版社/メーカー: Royal Irish Academy
- 発売日: 2019/11/28
- メディア: Kindle版
ジャンル:歴史
ページ:320
あらすじ:the Royal Irish Academy’s Dictionary of the Irish Languageより、アイルランドの歴史に関するアイルランド語単語を100個紹介。
著者:Sharon Arbuthnot……ベルファストのクイーンズ大学の研究者。
Máire Ní Mhaonaigh……ケンブリッジ大学教授。専門はケルト及び中世。
Gregory Toner……ベルファストのクイーンズ大学教授。専門はアイルランド語。
Joe McLaren……フリーのイラストレーター。芸術系の学校で教鞭もとっている。
題名からして子ども向けかと考えていたが、その実、中身はかなり本格的である。この本の使い方からアイルランド語の規則、発音などについてしっかり解説してから100語に入っていく。
THE GREAT IRISH SCIENCE BOOK(by LUKE O’NEILL)(ILLUSTRATED by LINDA FÄHRLIN)
ジャンル:ノンフィクション、科学
ページ:96
あらすじ:トリニティカレッジの教授が綴る、この世界についての話。マクロな話からミクロな話まで、宇宙の成り立ちから分子の世界まで、縦横無尽に語る。
著者:トリニティカレッジで教授を務める。専門は免疫学。
今年の科学本枠。子ども向けにイラストたっぷりで世界の仕組みを解説している。
著者は去年も“HUMANOLOGY”で同賞のショートリスト入りを果たしていた。
SUNDAY INDEPENDENT NEWCOMER OF THE YEAR 2019ショートリスト
An Post Irish Bool Awardsの1部門、SUNDAY INDEPENDENT NEWCOMER OF THE YEAR。
新人賞の位置づけである。
新人、とだけあって、今までにない作風や題材の取り上げ方を評価されているような気がする。今年は社会派な作品が多いだろうか。
An Post Irish Bool Awardsについては↓
受賞作品
WHEN ALL IS SAID(by ANNE GRIFFIN)
When All Is Said: A Novel (English Edition)
- 作者:Anne Griffin
- 出版社/メーカー: Thomas Dunne Books
- 発売日: 2019/03/05
- メディア: Kindle版
ジャンル:人生
ページ:326
あらすじ:これは一晩で語られた、1人の男の人生の話である。6月、土曜の夜、ホテルでMaurice Hanniganは5杯の酒を注文した。それぞれ1杯ずつを人生で関わった5人に捧げ、Mauriceはその人物との話を物語るのだった。
著者:ダブリン出身。2013年から執筆を始め、短編を主に書いていた。今作で長編デビュー。
NATIONAL BOOK TOKENS POPULAR FICTION BOOK OF THE YEAR 2019にもノミネートされた作品。とにかく文章が美しい。
ノミネート作品
DON’T TOUCH MY HAIR(by EMMA DABIRI)
Don't Touch My Hair (English Edition)
- 作者:Emma Dabiri
- 出版社/メーカー: Penguin
- 発売日: 2019/05/02
- メディア: Kindle版
ジャンル:歴史、フェミニズム、人権
ページ:256
あらすじ:これは黒髪の話である。植民地時代から現代にいたるまで、黒人女性の髪がどのように抑圧されていたのか、どのように解放されていったのか、そしてこれからの展望を語る。
著者:ダブリン出身。モデル、研究者など多くの顔を持つ。今作は自身が子どもの頃の体験から書かれたという。
ファッション関係には疎いのだが、最近、「ある文化にルーツをもたない人がその文化の伝統的な髪型をする」ことが「文化の盗用」として批判されることもあるらしい。この本のあらすじで触れられているキム・カーダシアンの編みこみというのもこれのことだろう。こういった本を知るたびに、自分は人種差別についてあまりに無頓着・鈍感であると痛感する。
MINOR MONUMENTS(by IAN MALENEY)
Minor Monuments (English Edition)
- 作者:Ian Maleney
- 出版社/メーカー: Tramp Press
- 発売日: 2019/04/04
- メディア: Kindle版
ジャンル:エッセイ
ページ:240
あらすじ:家族と記憶についてつづったエッセイ集。祖父がアルツハイマーにかかったことで、著者は記憶について、家とは何か、家族の絆について考えていく。
著者:ダブリン在住。作家としても、Webデザイナーとしても活躍中。
著者の祖父が暮らしているのは田舎の農場である。そこに訪ねた時の記憶から最初のエッセイは始まっている。農場を歩きながらダブリンで見た美術品のことを思い出すなど、著者の思考の流れのままに文章が流れていく感じ。
SHOW THEM A GOOD TIME(by NICOLE FLATTERY)
Show Them a Good Time (English Edition)
- 作者:Nicole Flattery
- 出版社/メーカー: Bloomsbury Publishing
- 発売日: 2019/03/21
- メディア: Kindle版
ジャンル:短編集、不条理、コメディ
ページ:256
あらすじ:どこかおかしい世界での女性を描く。移民したが出戻った人、ディストピアなキャンパスライフを送る大学生2人、世界が破滅に向かっているのに陽気な教師…ブラックユーモアたっぷりに描かれた8作を収めた短編集。
著者:ゴールウェイ在住。The Dublin Reviewなどで短編を発表している。
「糞として扱われるのに慣れている人はいないだろう」なんという書き出しか。これだけでこの作家のファンになりそうだ。他にもピリッとした文章が多い。デビュー作でこれだけ作家の世界を確立しているのはすごい。
LAST ONES LEFT ALIVE(by SARAH DAVIS-GOFF)
Last Ones Left Alive: The 'fiercely feminist, highly imaginative debut' - Observer (English Edition)
- 作者:Sarah Davis-Goff
- 出版社/メーカー: Tinder Press
- 発売日: 2019/03/07
- メディア: Kindle版
ジャンル:ディストピア
ページ:280
あらすじ:世界は荒涼し、野にはゾンビたちがはびこっている。そんな時代に生まれ育ったOrpenは、母亡き後、保護者のMaeveと共に徒歩で旅をしていた。しかしMaeveがゾンビに感染してしまう。感染者はすぐ殺すべきだが、OrpenはMaeveを救おうと奮闘する。
著者:ダブリン在住。アイルランドの独立系出版社Tramp Pressの創設者の1人。
今作がTramp Pressから出ていないのは本人のこだわりなのだろうか。
いずれ読みたいと思っていた小説。荒涼とした乾いた土地と、主人公のドライな語り口調が非常にマッチしていた。
LEONARD & HUNGRY PAUL(by RÓNÁN HESSION)
LEONARD AND HUNGRY PAUL (English Edition)
- 作者:Ronan Hession
- 出版社/メーカー: Bluemoose Books
- 発売日: 2019/03/20
- メディア: Kindle版
ジャンル:ユーモア、友情
ページ:245
あらすじ:LeonardとHungry Paulは友人である。物静かで紳士的、世界を常人とは違った風に見ている。そんな2人がこの世界での居場所を探そうと奮闘する物語。
著者:ソングライター、ミュージシャンとしても活躍。
文字が小さい。どちらかといえば静的な物語なのだろうか。文章も落ち着いていて、美しい。1章が「Leonardは~」と始まり、2章が「Hungry Paulは~」と始まるのも好きだ。
IRELAND AM POPULAR NON-FICTION BOOK OF THE YEAR 2019ショートリスト
An Post Irish Bool Awardsのノンフィクション部門。
前回のBOOKSELLING IRELAND NON-FICTION BOOK OF THE YEARと何が違うのかと言われても、ちょっとよくわからない。見た感じ、こちらの方が自伝多めだろうか。
An Post Irish Bool Awardsについては↓
受賞作品
BAREFOOT PILGRIMAGE(by ANDREA CORR)
Barefoot Pilgrimage (English Edition)
- 作者:Andrea Corr
- 出版社/メーカー: HarperCollins
- 発売日: 2019/10/17
- メディア: Kindle版
ジャンル:自伝、音楽
ページ:240
あらすじ:愛する父の死をきっかけに考えた人生の意味。音楽産業で生きるということ。有名ミュージシャンである著者が詩的に自らの人生を振り返る。
著者:兄妹バンド「ザ・コアーズ」のメンバー。音楽活動の傍ら、女優としても活躍。
この本のAudible版は著者本人が朗読したもの。詩のような表現が頻出することもあって、読むより聞く方が味わえる作品かもしれない。
ノミネート作品
THE MAKING OF A DETECTIVE(by PAT MARRY)
ジャンル:探偵、伝記
ページ:256
あらすじ:Garda(アイルランドの警察)の進歩と共に歩んできた著者が振り返る、自身の仕事や関わった事件について語った本。
著者:Gardaに所属し、数々の事件を解決に導いた。特にRachel O'Reilly殺人事件の解決については有名。2018年にGardaを退いている。
怖い顔をしているが、意外にも文章はざっくばらんで親しみやすい。本の最初に「兄弟へ捧げる」として短文が書いてある。それだけでも良い人なのがとてもよくわかる。
内容は主に過去の事件を振り返るもの。もちろん明かせない詳細も多々あるだろうが、実際に現場にいた警察の自伝ということで貴重な資料となりそうである。
LIVE WHILE YOU CAN(by FR TONY COOTE)
Live While You Can: A Memoir of Faith, Hope and the Power of Acceptance (English Edition)
- 作者:Fr. Tony Coote
- 出版社/メーカー: Hachette Books Ireland
- 発売日: 2019/05/02
- メディア: Kindle版
ジャンル:伝記、病気
ページ:320
あらすじ:運動ニューロン病と診断された時、Tony神父はまだ53歳だった。だんだん動かなくなっていく体、近づいていく死への恐怖から、神父が神の愛に目覚めるまでを描いた伝記。
著者:ダブリン出身。神父としてつとめる傍ら、自身の病気が判明してからは啓もう活動などを行っていた。2019年8月に55歳で亡くなる。
運動ニューロン病の代表的なものはALS。Tony神父は精力的に活動され、その影響は今でも残っている。まさに人生を限りなく生きた方だったのではないだろうか。
THE PERSONALS(by BRIAN O’CONNELL)
The Personals (English Edition)
- 作者:Brian O’Connell
- 出版社/メーカー: HarperCollins
- 発売日: 2019/10/03
- メディア: Kindle版
ジャンル:広告、人生
ページ:288
あらすじ:クラシファイド広告は色々なことを教えてくれる。見る人の人となりや興味関心など。クラシファイド広告をこよなく愛する著者が語る、広告から見える人生の話。
著者:ジャーナリスト。社会問題などに積極的に取り組む。前作“Wasted”はアイルランドのアルコール問題について語った本。
クラシファイド広告とは何ぞや?と思って調べたら、どうやら三文広告と呼ばれるものに近いらしい。フリーペーパーや新聞に載っている小さな広告と考えて良いらしい。確かにああいった広告は興味がなければ全く目を止めないので、どの広告に反応するかでどんな人なのか読み解くというのは面白いかもしれない。
OVERCOMING(by VICKY PHELAN WITH NAOMI LINEHAN)
Overcoming: A Memoir (English Edition)
- 作者:Vicky Phelan
- 出版社/メーカー: Hachette Books Ireland
- 発売日: 2019/09/12
- メディア: Kindle版
ジャンル:自伝、心理
ページ:368
あらすじ:1人の女性が大きな山を動かした記録。命の危険にさらされた事故、母になり、うつ病になったこと。そしてHSE(Health Service Executive)による子宮がん見過ごし事件。事件の詳細を明らかにするため、彼女は戦った。
著者:(Vicky Phelan)2人の子を持つ母。子宮がんに関して今も活動を続けている。
(Naomi Linehan)ジャーナリスト。今回が2作目。
HSEは公的医療機関であり、無料か安価でサービスが受けられる。医療ミス・健診での見過ごしは最近日本でも何件かニュースになっていた。専門知識がない分、私たちは病院を信頼せざるを得ない。どう対処したらいいのか、難しい問題である。
MY CRAZY WORLD(by CHRISTY DIGNAM WITH DAMIAN CORLESS)
My Crazy World: The Autobiography (English Edition)
- 作者:Christy Dignam
- 出版社/メーカー: Simon & Schuster UK
- 発売日: 2019/09/19
- メディア: Kindle版
ジャンル:伝記、音楽
ページ:304
あらすじ:ミュージシャンである著者が自身の半生を綴った物語。幼少期の性的暴行被害やドラッグ、音楽について語る。
著者:ミュージシャン。何度もチャート入りする人気アーティストだが、薬物中毒でも話題になった人物。
何かとニュースになる人物のようだが、本人の口からそれらの話題を語るのは初めてらしい。性暴力から薬物、闘病までショッキングな内容が多そうである。
BOOKSELLING IRELAND NON-FICTION BOOK OF THE YEAR 2019ショートリスト
An Post Irish Book Awardsの1部門であるBOOKSELLING IRELAND NON-FICTION BOOK OF THE YEAR 。
名前の通り、ノンフィクションの本が選出される。
An Post Irish Book Awardsについては↓
受賞作品
CONSTELLATIONS(by SINÉAD GLEESON)
Constellations: Reflections From Life (English Edition)
- 作者:Sinéad Gleeson
- 出版社/メーカー: Picador
- 発売日: 2019/04/04
- メディア: Kindle版
ジャンル:自伝
ページ:304
あらすじ:著者の自伝的エッセイ。体に金属を埋め込まなければならなくなった彼女がどう生きてきたのか。母であること、アイルランドに生きる女性であることを体にフォーカスして描く。
著者:ライター、編集者。急性前骨髄球性白血病にかかり、股関節を金属に置き換えている。今作が初出版。
医学に詳しくないので、金属になっているのは股関節ではないかもしれない。英語表記だとHip replacement。文章は読みやすい。タイトルごとに長さまちまちの文章が並べてる。寝る前や通勤通学のスキマ時間にさらっと読める感じだろうか。
ノミネート作品
THE EDUCATION OF AN IDEALIST(by SAMANTHA POWER)
The Education of an Idealist: THE INTERNATIONAL BESTSELLER (English Edition)
- 作者:Samantha Power
- 出版社/メーカー: William Collins
- 発売日: 2019/09/10
- メディア: Kindle版
ジャンル:自伝
ページ:592
あらすじ:ピュリッツァー賞をとったサマンサ・パワーの自伝。アイルランドに生まれ、アメリカへ移住した幼少期からアメリカ国連大使になるまでを成功・失敗ともに赤裸々に描く。
著者:ジャーナリスト。オバマ政権下で大統領上級顧問や国際連合大使を務めていた。「集団人間破壊の時代」でピュリッツァー賞を受賞。
600ページ近い超ボリューム。それだけに内容も多岐にわたっている。彼女の人生から思想まで事細かに書いてあるそうだ。
ピュリッツァー賞をとった「集団人間破壊の時代」は邦訳が出ている。
THE BORDER: THE LEGACY OF A CENTURY OF ANGLO-IRISH POLITICS(by DIARMAID FERRITER)
The Border: The Legacy of a Century of Anglo-Irish Politics (English Edition)
- 作者:Diarmaid Ferriter
- 出版社/メーカー: Profile Books
- 発売日: 2019/02/07
- メディア: Kindle版
ジャンル:歴史
ページ:184
あらすじ:20年前まで、アイルランドと北アイルランドの間には明確な国境があった。グッドフライデー合意の後、そのボーダーはほぼ消えさったはずだった。Brexitが決まるまでは。過去1世紀の歴史をたどり、現代にまで続くイギリスとアイルランドの政治問題を明らかにしたノンフィクション。
著者:歴史学者。アイルランドの歴史に関する本を多数著している。
なんともタイムリーな本になってしまった。内容はページ数に対して非常に深く難しい。アイルランドの歴史は知っているのを当然として、さらに深堀りしていく内容となっている。
REPUBLIC OF SHAME(by CAELAINN HOGAN)
Republic of Shame: Stories from Ireland's Institutions for 'Fallen Women' (English Edition)
- 作者:Caelainn Hogan
- 出版社/メーカー: Penguin
- 発売日: 2019/09/12
- メディア: Kindle版
ジャンル:歴史、カトリック、女性
ページ:256
あらすじ:アイルランドには、かつて「不適切な女性」の烙印を押された女性がいた。彼女らはランドリーで強制的に労働させられ、「不適切に」出産した女性とその子どもは離れ離れにされていた。アイルランドのカトリック教会の所業を冷静な視点から描く。
著者:ジャーナリスト。中東やアフリカ、ヨーロッパで取材活動を行う。今作が初出版作品。
著者は1988年生まれ、若いが素晴らしいジャーナリストだ、とレビューにあった。今作は単なる取材レポートというより、自身の経験談から始まっている。この題材に興味をもったきっかけ、昔であれば自分は生まれた時「不適切」として処理されていたであろうことや父母のなれそめなど。知らず知らず著者の話に引き込まれてしまう。
カトリック教会でのランドリーについて描いた作品なら他に読んだことがある。
これは今年読んだ中で1番面白い小説だった。
HEROIC FAILURE(by FINTAN O’TOOLE)
Heroic Failure: Brexit and the Politics of Pain (English Edition)
- 作者:Fintan O'Toole
- 出版社/メーカー: Apollo
- 発売日: 2018/11/22
- メディア: Kindle版
ジャンル:政治、歴史
ページ:240
あらすじ:「なぜ英国は離脱を選んだのか」に迫る。かつて大帝国を築いた英国がどのように変化していったのか。そして、Brexitによってツケを払うことになるのは誰なのか。
著者:コラムニスト、ジャーナリスト。The Irish Timesなどで連載を持つ。
著者はアイルランド出身なので立ち位置としては「Brexitの当事者ではないが、それによって影響を受ける」立場になる。内容はやや難しいかもしれない。
ELSEWHERE(by ROSITA BOLAND)
Elsewhere: One Woman, One Rucksack, One Lifetime of Travel (English Edition)
- 作者:Rosita Boland
- 出版社/メーカー: Transworld Digital
- 発売日: 2019/05/30
- メディア: Kindle版
ジャンル:旅行
ページ:288
あらすじ:若い頃オーストラリアに旅行してから、すっかり旅に魅了されてしまった著者。9つの国を旅した記録。
著者:ジャーナリスト。2018年には NewsBrands Ireland Journalist of the Yearに選出されている。
1988年から2016年までの記録を書いたもの。前書きにあった辞書を読みとおしたエピソードが理解できすぎて好感度上がる。日本編もあり、金継ぎにまつわる話のようだ。
ノンフィクションはBrexitや、その影響を受けるアイルランドのこれからについてフォーカスした本が多く選ばれていた印象。時代柄しょうがない気もする。