6&4

アイルランドの本(小説・児童書・YA)を紹介するブログです。

THE LOVE LEABHAR GAEILGE IRISH LANGUAGE BOOK OF THE YEAR 2019ショートリスト

An Post Irish Book Awardsのアイルランド語部門。ノミネートは全てアイルランド語で書かれたものに限られる。

昨年はケルト神話を現代語訳したものが2つノミネートされており、内「マグ・トゥレドの戦い」を書いたものが受賞した。今年は歴史を題材にしたものが選ばれてはいるものの、古典翻訳は1作もない。

創設されて2年目のこの部門。アイルランド語は古典を語り直すだけではないのだと主張しているようで面白い。

An Post Irish Book Awardsについては↓

rokuyon64.hatenablog.com

受賞作品

TAIRNGREACHT(Údar PRIONSIAS MAC A’BHAIRD)

ジャンル:ミステリー、キリスト教

ページ:300

あらすじ:Chonchúir Uí Bhraonáinはローマで殺人事件の目撃者となってしまう。そのせいで命を狙われるChonchúirだが、その裏にはキリスト教の根幹に関わる預言が隠されていた。

著者:ドニゴール出身。詩や劇、ヤングアダルトから短編小説など幅広く執筆する。

作品名"Tairngreacht"は「預言」の意。あらすじだけ読んでダン・ブラウンのようだと思っていたらAn Post Irish Bool Awardsの紹介文にも同じように書いてあった。こういう歴史系ミステリーすごく好きなのでいずれアイルランド語がもっと上達したら読みたい。

ノミネート作品

AN TROMDHÁMH(Údar FEARGAL Ó BÉARRA)

ジャンル:古典、風刺

ページ:100

あらすじ:中世頃に書かれた"Tromdhámh Guaire"の現代語訳。グアレ王の元に吟遊詩人が来て……という筋。『クアルンゲの牛捕り』再発見の物語でもある。

著者:メイヨー出身。ゴールウェイとドイツで学んだ後、世界各国で研究をしている。

現代語訳というよりは語り直しだろうか。"Tromdhámh Guaire"の適切な日本語が見つからなかった……。舞台設定は7世紀頃。

CITÍ NA GCÁRTAÍ(RÉALTÁN NÍ LEANNÁIN)

ジャンル:歴史、戦争

ページ:179

あらすじ:Katarinaが結婚したのはアイルランド人だった。夫は英国軍人として戦争に参加し、いずれアイルランド島が統一される日を夢見ていた。

著者:ベルファスト生まれ、ダブリン在住。詩や短編小説を発表し、今作が初の長編小説。

著者自身の祖父と祖母をモデルにした歴史フィクション。当時英国軍に参加したアイルランド人はそれなりにいたらしい。

MAR A BHÍ AR DTÚS(by JOE STEVE Ó NEACHTAIN)

ジャンル:自伝

ページ:283

あらすじ:著者の過去を綴った自伝。特に隣人について語る。

著者:1969年から執筆を始める。ラジオドラマや小説で数々の賞をとっている。2020年死去。

本の情報が少なすぎる。著者は1942年生まれ、ノスタルジックな表紙。

GRÁINNE GAISCÍOCH GAEL(by SIOBHÁN PARKINSON)

ジャンル:歴史

ページ:224

あらすじ:アイルランドでも有名な女海賊、グレース・オマリー。彼女は勇猛でかっこいい存在として描かれることが多いが、今作では母として女性として、より人間的な側面を描き出している。

著者:ダブリンで生まれゴールウェイで育つ。子ども向けから大人向けまで幅広く書く。英語・アイルランド語両方で執筆。

グレース・オマリーは16世紀に実在した人物。エリザベス1世とのやり取りが有名だが、人生や人となりは分かっていないことが多い。ただアイルランドでは学校でも教わる等大人気の人物でもある。

GÁIRE IN ÉAG(by SEÁN Ó MUIREAGÁIN) 

ジャンル:短編、北アイルランド問題

ページ:156

あらすじ:北アイルランド問題が激化していたベルファストを舞台にした短編集。4編おさめられている。北アイルランド問題を通して人間の内面を描いた作品。

著者:ベルファスト出身。本人のTwitterアカウントにも詳細なプロフィールはないが、イスラエルIRAと間違えられ捕まっていたらしい。

アイルランド語で書かれた本がAmazonで販売されているのは珍しい。まるで犯罪小説のようなハラハラ感との触れ込みであり、表紙もそんな感じの雰囲気である。