紹介:The Night of the Party
本情報
The Night of the Party (English Edition)
- 作者: Rachael English
- 出版社/メーカー: Hachette Books Ireland
- 発売日: 2018/05/03
- メディア: Kindle版
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ジャンル:ミステリー
ページ:400
*Kindleだと2章まで試し読みができます。
あらすじ
1982年1月。Kilmitten(キルミトン)の街では猛吹雪の中、ある家でパーティが行われていた。4人の若者、Tom(トム)、Conor(コナー)、Tess(テス)、Nina(ニナ)は家の裏手に隠れてビールを飲んだり、たばこをふかしたりしていた。その夜、Galvin(ガルヴィン)神父が殺された。
それから35年。警察官となったコナーは父の後を継いでガルヴィン神父殺人事件の行方を追っていた。彼は昔なじみのトムが何かを知っていると踏んだが、口を割ってくれるかわからない。コナーの疑問によって、それぞれの道を歩んでいた4人は再会することになる。
試し読みしての感想
登場人物がいっぱい
読み出しはタイトルにふさわしくパーティの場面からです。ホームパーティに街の人たちがたくさんやってくるのですが、とにかく多い。ただでさえ英語の名前で覚えにくいのにそれが後から後から新登場。街の人たちにしてみれば見知った顔ばかりなのでしょうが、読んでいるこちらは初対面です。確かに、初めて来たパーティで壁の方に立ちながら人々のゴシップに耳をかたむけているような感覚ではありました。
もしどうしても覚えられなくとも、パーティの場面が終わればまさに祭りの後のような雰囲気に。ガルヴィン神父が殺されたことに街の話題は持って行かれ、登場人物もそれほど多くはなくなります。
舞台は架空の街
舞台となるキルミトンは架空の街のようです。あまり大きな街ではなく、噂話もすぐ広まってしまうような感じを受けました。
コナーはここで警官となって過ごすようですが、友人の中には恐らく都会に出て華やかな生活をしている人も。人生いろいろです。
著者について
ジャーナリスト兼作家。主にラジオで活躍されているそうです。
今作が2つ目の作品。
紹介:Emotional Resilience
本情報
Emotional Resilience: How to safeguard your mental health (The Flag Series Book 6) (English Edition)
- 作者: Harry Barry
- 出版社/メーカー: Orion Spring
- 発売日: 2018/05/03
- メディア: Kindle版
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ジャンル:メンタルケア、自己啓発
ページ:289
*Kindleだと前書き、1章まで試し読みができます。
あらすじ
2017年のアイルランドにおける調査では、子どもたちのほとんどが何かしら精神的ストレスを感じ、自殺を考えるに至る子までいると出ている。子どもだけではなく、大人も日々ストレスにさらされているが、そうしたストレスとうまく付き合っていくにはどうすればいいのか。あるいは、ストレスに悩む子どもにどう接すればいいのか。
自己受容の仕方、社会との付き合い方、理不尽さと付き合う方法、ワークライフバランスの取り方を解説した本。
試し読みしての感想
全年齢向け
あらすじでも子どもに焦点をあてて書いてしまいましたが、前書きで作者も断っているようにこの本はどんな年代の人が読んでも有益だろう、とのことです。実際に社会人へ向けてワークライフバランスの章もあるようですし。
ですが、もしストレスに悩んでいる子どもに対して何かしたいと思っているのなら、この本に書いてあることをぜひ実践してみて、とも書いてありました。ただ、本に読んであることを伝えるのではなく、自分でも実践してからのほうがより説得力を持って話ができるそうです。
実践的
この前記事にした「Confidence Kit」よりは、状況における行動方法や考え方など、さらに実際的なことについて書いた本のように感じました。章立てもすべてSkill~となっています。
文章は優しく語りかける雰囲気です。さすがドクター。読んでいるだけで癒し効果がありそうです。
著者について
お医者さんです。メンタルヘルス関係を専門とし、既に本を何冊も出版されています。
紹介:Confidence Kit
本情報
The Confidence Kit: Your Bullsh*t-Free Guide to Owning Your Fear (English Edition)
- 作者: Caroline Foran
- 出版社/メーカー: Hachette Books Ireland
- 発売日: 2018/05/17
- メディア: Kindle版
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ジャンル:自己啓発
ページ:272
*Kindleだと前書きと1章が試し読みできます。
あらすじ
この本は平気な顔をしてライオンの前に出られるような人間が読む必要はありません。……人が生きていくにあたって感じる恐怖。それを乗り越えるのではなく、どうやってうまく付き合っていけばいいのか、そもそも人が恐怖を感じるのはどんな時なのか書いたHow to本。
試し読みしての感想
プレーンな文章
ものすごい分かりづらいたとえをします。ミンティアのような文章です。さわやか。
もう少しわかりやすく言うと英語の教科書に載っている文章に近い気がします。小説ではないので、論理的であまり比喩表現もなくわかりやすい感じがしました。かと言ってひたすらロジカルにいくわけでもなく……作者の優しさがにじみ出ているような、そんな文体です。
でも書名にBullsh*tって入れるのはなんともアグレッシブですね……。
自信と恐怖は表裏一体
肝心の内容は、いかに恐怖心と付き合っていくか、ということになっています。前書きの中で、この本を読むとこういうことが身に付きます、これには役に立ちません、と注意してくれているのは非常に親切。
そこで出てきたのが上記「自信と恐怖は表裏一体」という文章でした。そのためにどういう時に人は恐怖を感じるのかというところから紐解いていくと。実際に論文なども引用しながら説明してくれているのですが、難しい単語もさほどなく、わかりやすいです。
実際にこの本を作る時に「自分は心理学の専門家でもないのに書いていいのだろうか」という恐怖に襲われたことを書いています。そういう部分に好感もっちゃう。
著者について
ジャーナリストやソーシャルメディアの編集者などを経て2017年に1作目を出版。今作が2作目です。とても今風の素敵な女性でした。
1作目は心配とどう付き合っていくか書いた本で、今作と併せて読むとより効果があるのだとか。
紹介:Grace after Henry
本情報
Grace After Henry: A funny and poignant novel, perfect for fans of Marian Keyes (English Edition)
- 作者: Eithne Shortall
- 出版社/メーカー: Corvus
- 発売日: 2018/05/03
- メディア: Kindle版
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ジャンル:恋愛、死
ページ:432
*Kindleだとプロローグ~2章まで試し読みできます。
あらすじ
Grace(グレース)はいつだって恋人のHenry(ヘンリー)と一緒だった。……たとえ、ヘンリーが死んでいても。
ヘンリーが死んだのは2カ月前。以来グレースは心に空いた穴を埋められずにいた。そんな時、Andy(アンディ)に出会う。グレースはどういうわけか、アンディとヘンリーをほぼ同一視してしまう。徐々にアンディへ惹かれていくグレース。それはヘンリーへの裏切りになるのか、グレースは悩んでいく。
試し読みしての感想
2人はラブラブ
構成として、プロローグにてグレース視点、ヘンリー視点。数週間経ったグレース視点から本編が始まります。プロローグで2人は新居を見に行く予定でした。グレースがヘンリーを待っている間、ヘンリーがグレースの元へ向かう間、これでもかというくらいノロケのオンパレードです。2人の出会いは学生時代にさかのぼるそうで、なれそめもたっぷり。
それだけにヘンリーの死がグレースに与えた衝撃は大きなものでした。ヘンリーと住むはずだった家を買い、1人で暮らしはじめます。そして引きこもります。近所の中国人に「夜しか出歩かないなんて吸血鬼なのか?」と聞かれるくらいなので、その塞ぎようはこっちまで悲しくなってくるほど。
お互いここまで想い合える恋人が出来るのは素晴らしいことだと思いつつ、それだけに失ったときの反動が強そうですね。それこそ自分の人生を捨ててしまうくらいには。
すこし不思議?
あらすじを読む限り、ヘンリーは死後、違った形でグレースの元へ現れるみたいです。悲しみのあまり気が狂ってしまったわけではないようですが…その理由などは語られるのでしょうか。ただのロマンス物以外としても楽しめそうです。
著者について
作家・ジャーナリスト。ラジオのパーソナリティを務めていることも。
今作が2作目です。公式HPはこちら→Eithne Shortall – Eithne Shortall
今だとサイトのアイコンがGrace After Henryの表紙の一部になってますね。細かい。
紹介:Our Secrets and Lies
本情報
ジャンル:家族、母子
ページ:448
*Kindleだと3章まで試し読みができます。
あらすじ
1999年。Lucy(ルーシー)は21歳の時、恋人の子を妊娠をしてしまう。恋人のTom(トム)に恐る恐る打ち明け、2人は英国・リバプールに行って中絶手術をする……はずだった。
2016年。双子の母親となったルーシーは、自分の将来と引き換えに生んだ子どもたちが幸せになれるよう人生を捧げていた。子どもたちはそれぞれ夢を抱いていたが、それが思わぬ真実を明らかにする。
試し読みしての感想
2部仕立て
あらすじでも書いたように、前半は1999年、後半は2016年を舞台に展開していきます。1999年はルーシー21歳。2016年ではルーシーの子どもが17歳になっています。
試し読みできる範囲ではルーシーもトムも中絶する気満々だったので、あらすじを読んで驚きました。出版社のあらすじではほぼルーシーの子どものことしか書いていなかったので、物語も子どもたち中心になりそうですね。
アイルランドで妊娠すること
偶然なのかどうなのか、最近読む小説ほとんどで妊娠する女性が出てきます。いつの時代もどこであっても、妊娠が良くも悪くも女性の人生を変えてしまうのは事実でしょう。さらに、アイルランドにあっては法律で中絶が禁止されているため、妊娠は今作のルーシーのように、将来全てを投げうたなければならない、ことを意味します。かといって全員が妊娠したら出産しているわけではなく、隣国英国へ行って中絶をしている方が多いようですね。
それでも中絶の為に外国へ行かなければいけないのは金銭的にも精神的にも負担となります。実際に今作では「もしダブリンで中絶が出来たなら、何事もなかったかのように毎日を続けられるし、トムにも内緒にできるのに」とルーシーの悔やむシーンが出てきます。
こうした問題が小説で描かれているのは大きな社会問題になっているからなのでしょうか。ちょうど今週の金曜日5月25日、アイルランドで中絶禁止法の改正案への投票が行われることになっています。
著者について
ダブリン生まれ、ダブリン育ち。母親も小説家だったようです。パリやロンドンで暮らし、働きながら小説を書いて、後小説家デビュー。
女性向けといいますか、家族を扱った小説が多いですね。表紙がかわいいです。
レビュー:Begone the Raggedy Witches
本情報・あらすじ
Begone the Raggedy Witches (The Wild Magic Trilogy, Book One)
- 作者: Celine Kiernan
- 出版社/メーカー: Walker Books
- 発売日: 2018/02/01
- メディア: Kindle版
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ジャンル:ファンタジー、YA
あらすじ:Mup(マップ)が魔女を見た夜、大好きなおばちゃんが死んだ。魔法界の女王の娘であるマップの母親をさらいにきた魔女を、幽霊のおばちゃんと一緒に撃退したのもつかの間、今度は父親が魔法界へ連れさられてしまった。母、弟、飼い犬、幽霊のおばちゃんと一緒に魔法界へ飛び込んだマップの冒険譚。
登場人物
Mup(マップ)
主人公。浅黒い肌と黒い髪の少女。父方がナイジェリア出身であり、その血を強く継いでいる。母は魔法界の女王の娘。マップ自身も多少の魔法が使える。
彼女は本当に良い子です。惻隠の情がありますね。一時的に腹を立てた相手であっても、一方の事情を汲み取ることができる。守ると決めた相手のためならどんなに自分が傷ついても守り通す。まさにヒーローでした。これほど好感の持てる主人公も久しぶりです。
Stella(ステラ)
マップの母。魔法界(正式にはGlittering Land/輝きの世界)の女王の娘。幼い頃、女王の元にいたら危険だと判断したおばちゃんの手引きで人間界へ逃げ出してきた。何も得意なことがない、と自分では思っていたが魔法界に来て本当の自分の力を知る。
半分主人公、のような。
Tipper(ティッパー)
マップの弟。まだベビーシートを使っている赤ちゃんだが、魔法界ではなぜか犬になる。よく英語を間違える。
無邪気でかわいいですが、核心をつくような発言もあり、マップの旅の心強いパートナーになります。
Crow(クロウ)
カラスの少年。魔法界出身。母は行方不明、父は女王に攫われてしまった孤児。
寂しさ故に性格がひねくれている。同い年くらいのマップには共感と嫉妬が混ざった複雑な感情を抱いています。
舞台と補足
舞台はアイルランド、魔法界の2つです。ほぼ魔法界メイン。便宜上魔法界と呼んではいますが、正式にはGlittering Landと呼ばれていました。印象としては『不思議の国のアリス』の不思議の国、『オズの魔法使い』のオズ王国とその周辺に似ています。
魔法界は女王が支配しています。マップの血縁上の祖母にあたります。かなり独裁的な政治をして、タイトルにもなっているRaggedy Witchesは女王の配下となった人たちのこと。彼らは家族を切り捨て、ただ女王のためだけに献身的に仕えることを誓わされています。代わりに強力な魔法が使える。
ここには魔法が存在し、魔法が使えるマップやママによると「この世界は(現実と違って)色鮮やかに見える」だそうです。街が存在し、それぞれ女王の法に従って暮らしていますが、全員魔法が使えるのかはわかりません。警官が鳥に変身してましたから使えるのでしょうか。
Clann'n Cheoil
魔法界における一部族。“the music people”と描写されている通り、日本語に直訳するなら「音楽族」でしょうか。コーラスによる魔法が使えます。
女王に反抗的だとして、男はカラスに、女性は猫に姿を変えなければいけない。さらに会話では全て韻を踏むこと、という嫌がらせなんだかコントなんだかよくわからないルールを定められています。上記のクロウもこの一族。彼はまだ子どもなので韻を踏むのに四苦八苦していました。
Hare(ノウサギ)とStitcher of worlds
ノウサギは魔法界においてStitcher of worldsと言われ、女王から忌み嫌われています。「世界の裁縫屋」として。
これは恐らく完全な作者の創作ではなく、西欧ではウサギがトリックスター・異界へ誘う者であることからきていると思います。それこそ『不思議の国のアリス』ではウサギを追ってアリスは不思議の国へ迷いこみました。
元々、春の女神エオストレの眷属がHareだったことからウサギは繁栄、春の訪れを表すようになりました。それがキリスト教に取り込まれるにしたがってエオストレの名からイースターの名称のみが、ウサギはトリックスターの象徴だけが残ったのだとか。(イシュタルの説もあり)ここら辺は専門的に詳しいわけではないのでもうちょっと勉強したい。ともかく、作中でRabbitではなくHareだ、と強調されていたのは上記を踏まえてのことなのでしょう。
「歩き方から話し方、歌い方から洋服まで」国民をルールに縛り付ける女王とは、なるほど、相性が悪そうです。
感想
マップとクロウの関係性
もう今年ナンバーワンをあげていいくらい好きな関係性でした。
父は女王に囚われ、母は行方不明。Clann'n Cheoilの大人に面倒を見てもらってはいますが、まだ幼くうまく韻を踏めないせいで魔女たちの目につきやすく、疎んじられているクロウ。
父にも母にも(おばさんにも)愛されて育ち、家が大好きなマップ。彼女は女王の孫という立場から、Clann'n Cheoilからもそこそこ丁重に扱われます。その理由はマップのママに女王を打倒してほしいという下心からなのですが、まあそれはそれ。
マップは最初からクロウにお姉さんとして接します。韻を踏む手伝いをするし、クロウが拗ねた時は優しく寄り添うなど、もはや母性の塊です。弟がいるからなのでしょうか。
対してクロウはマップに対して心を開けません。父を女王に連れ去られた者同士、共感することもあれば、Clann'n Cheoilに邪魔者扱いされないマップを妬むこともあります。
この2人がぎこちなく、それでも関わり合いながら理解を深めていく過程がなんとも初々しく、読んでいて楽しく感じました。
She didn't get a chance to say any more because Crow flung himself at her, and her words were choked by how hard he hugged her.(A glowing Pathより)
クロウが飛びついてきて、マップは何も言えなくなってしまった。ぎゅっと抱きしめられ、息が詰まる。
ついにはこんなシーンが出てきてしまっては萌え転がるしかないじゃないですか。
手のひらサイズの冒険
マップは世界を救いません。その役目はマップのママにあります。マップも魔法は使えますが、怒りに任せて使ってしまうなど、うまく自分でコントロールできないようです。ただ出来事に翻弄されるまま、魔法界を旅していきます。
途中、幼いマップには辛すぎるような試練もあるのですが、彼女は歩みを止めることはありません。そこがマップの長所であり、非常に好感の持てる部分でした。
マップは魔女に恐怖を感じています。家が大好きだし、魔法界からパパを助け出したらすぐ帰りたいと思っています。
しかしマップは他人のために行動できる子です。読んでいて抱きしめたいと思うこと多々ありました。クロウならこの気持ちがわかってくれるはず。
There's no place like home.
印象が似ている、とはすでに書きましたが、特に『オズの魔法使い』を彷彿とさせる描写がちらほらありました。中でも家に関する話が。
マップは家が大好きです。安心できて、守られていると感じることができる、と本人談。物語が夜の嵐の自宅から始まり、嵐の止んだ朝に終わったのも象徴的です。
けれどマップはドロシーではありません。彼女の出した答えも、ドロシーとは違いました。とてもマップらしいものでした。
物語は続く
今作はシリーズ物の第1作目です。巻末にはすでに次作のあらすじが載っていました。早くも楽しみです。
紹介:The Ruin(Cormac Reilly #1)
本情報
ジャンル:ミステリー
ページ:400
*Kindleだと2章まで試し読みができます。
あらすじ
Cormac Reilly(コーマック・レイリー)がある女性を訪ねていくと、既に彼女は死に、家には2人の子どもが残されていた。その内の1人、Jack(ジャック)が体に傷を負っていたため、2人を病院に連れていく。しかし診察の最中にジャックの姉Maude(モード)は行方をくらましてしまった。
それから20年。ジャックが水死体となって発見された。警察は自殺と断定、探偵であるコーマックが再調査を依頼される。調査を進めるうちに、モードが犯人ではないかとの疑いが強まっていく。
試し読みしての感想
映画のような語り出し
しょっちゅう上記の表現を用いている気がするのですが、今回も映画のような語り出しでした。コーマックが車で、ある女性宅へ向かうシーンから始まります。映画だったら絶対にコーマックの車をカメラで追いつつ、クレジットとタイトルが出てきてました。
ミステリー物は衝撃的なシーンから始まるか、今作のようにじわじわ静かに物語が開始していくかのどっちかに分かれそうですね。
コーマックの人柄
なかなかの好人物です。冷静な観察眼を持ちつつ、子どもに対して言い負かされるなどお人よしな部分もあります。タイトルにCormac Reilly #1とついているのだけあって、コーマックが主人公のシリーズ物のようです。
Ruin
プロローグの前に、作者からの但し書きで本の題名“Ruin”はダブルミーニングだと説明があります。アイルランド語のことわざに“Ní scéal rúin é más fios do thiúr é.”というのがあり、英訳すると“It's not a secret if a third person knows about it.”。
ここでのRúinはScéalと結びつくことで「隠されたもの」の意味になりますが、単体だと「愛」も表すそうです。
一方で英語のRuinはご存じ「荒廃」の意味になります。
こういうダブルミーニングすごく好きです。一見かけ離れた意味に見える英語とアイルランド語のRuinにどんな意図が込められているのか考えて読むのも楽しそう。
著者について
コーク州生まれ、オーストラリア在住。法律を学ぶ。
今作がデビュー作。