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アイルランドの本(小説・児童書・YA)と気になったニュースを紹介するブログです。

THE JOURNAL.IE BEST IRISH PUBLISHED BOOK OF THE YEAR 2018ショートリスト作品

An Post Irish Book Awardsの1部門である、THE JOURNAL.IE BEST IRISH PUBLISHED BOOK OF THE YEAR 2018。

アイルランドについて書かれた本が対象となっています。そうしたジャンルだからか、ノンフィクションや自然、歴史系の本が多くノミネートされています。

An Post Irish Book Awardsについては↓
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受賞作品

LIGHTHOUSES OF IRELAND – AN ILLUSTRATED GUIDE TO THE SENTINELS THAT GUARD OUR COASTLINE(by ROGER O’REILLY) 

Lighthouses of Ireland: An Illustrated Guide to the Sentinels that Guard our Coastline

Lighthouses of Ireland: An Illustrated Guide to the Sentinels that Guard our Coastline

 

GPSも何もなかった時代、船乗りにとって唯一の道しるべが灯台だった。アイルランドでは5世紀に灯台(の原型のようなもの)が作られている。それから船乗りは何かあると灯台の光を頼りにしてきた。灯台を中心にアイルランドの歴史を振り返る。

*2018年12月現在紙媒体での販売しかないようです。

前にアイルランド海賊を紹介する本を読みました。そこにもあった通り、そして地図を見てわかる通り、アイルランドは海と共に暮らしてきた国です。ロマンですよねえ。ただその中で灯台に注目するというのは新しいかもしれません。

余談ですが、この本を出版する時に作者か誰かが灯台型クッキー?を焼いていたのが印象に残っています。

THE GREAT IRISH WEATHER BOOK(by JOANNA DONNELLY & FUCHSIA MACAREE)
The Great Irish Weather Book

The Great Irish Weather Book

 

気象学者の著者が子ども向けに、気象に関するあれこれを解説した本。かわいらしいイラスト付き。

*2018年12月現在、紙媒体での販売しかないようです。内容的に当然かなとも思いますが。

英国人と同じように、と言うと怒られてしまうかもしれませんが、アイルランドの人々も天気の話題が好きなようです。著者はMet Éireann(気象庁的なもの)に勤める人で、テレビで気象予報も行っているその道のプロ。

DR HIBERNICA FINCH’S COMPELLING COMPENDIUM OF IRISH ANIMALS(by ROB MAGUIRE & AGA GRANDOWICZ) 
Dr Hibernica Finch's Compelling Compendium of Irish Animals

Dr Hibernica Finch's Compelling Compendium of Irish Animals

 

アイルランド全国を巡り、そこに住む動物に誰より詳しい著者が両生類から哺乳類、海の動物まで解説した本。子ども向けに平易な文、またリアルな絵をふんだんに使って書かれている。

*これも紙媒体のみ。図鑑やイラストが使われているものはどうしてもそうなりますね。

出版社のHPで数ページ、サンプルが見られます。ぼんやり眺めていて良いなと思ったのはアイルランド語でその動物を何と呼ぶか、が書いてあることでしょうか。これはアイルランド語が捗ります。ページレイアウトは研究者のノート風で、子どものテンションもあがりそうです。

PEOPLE ON THE PIER(by MARIAN THÉRÈSE KEYES & BETTY STENSON) 
People on the Pier

People on the Pier

 

ダン・レアリーの埠頭には、世界中から人々が訪れる。そこの歴史と美観を写真と共に綴った本。例によって紙媒体のみ。

ざっとあらすじを読んだ感じ、ソーシャルメディアの企画でもあったようです。埠頭だけでなく訪れる人々にも焦点を当てています。本の題名そのままの紹介になってしまった。

HUMANOLOGY: A SCIENTIST’S GUIDE TO OUR AMAZING EXISTENCE(by PROFESSOR LUKE O’NEILL) 
Humanology: A Scientist's Guide to Our Amazing Existence (English Edition)

Humanology: A Scientist's Guide to Our Amazing Existence (English Edition)

 

アイルランドで激熱な科学者が人間についてウィットを交えながら解説した本。生と死、そしてこれからの人間についてまで語る。

書き出しをちょろりと読んだら、2人の人間と蛇について語っていました。お堅い学術書ではないようです。その後もアイルランドにおける教会の教えなどに寄り道しつつ、きちんと細胞やら何やらの話に移っていました。書き出しで興味を惹きつつ本題に入っていく手法。落語家もかくやでした。

BLAZING A TRAIL: IRISH WOMEN WHO CHANGED THE WORLD(by SARAH WEBB & LAUREN O’NEILL) 
Blazing a Trail: Irish Women Who Changed the World

Blazing a Trail: Irish Women Who Changed the World

 

女性パイロット・レディヒース、看護師ネリー・キャッシュマン。女海賊グレース・オマリーに、ダンサーのニネット・ド・ヴァロア……。アイルランドには世界を変えてきた女性がたくさんいる。彼女たちの活躍をイラスト付きで描いた本。

今年のフェミニズム運動とも相まって、ツイッターで言及されていることが多い本だった印象です。そして児童書のくくりでもあるので、そっちの部門で受賞しています。

 

以上、受賞&ノミネート作品でした。イラスト付きのものが多く、Kindle版でほぼ出ていない・専門家が子ども向けに書いた本というところが共通していそうです。この中で灯台について書いた本が受賞したのは海への関心の高さがうかがえるでしょうか。題材もちょっと斬新ですし。

紹介:Mind on Fire

本情報 

Mind on Fire: A Memoir of Madness and Recovery (English Edition)

Mind on Fire: A Memoir of Madness and Recovery (English Edition)

 

ジャンル:自伝

ページ:288

あらすじ

母の死をきっかけに躁うつ病を発症した著者。舞台脚本家となった後も自殺願望や孤独感に襲われる。ロンドンでホームレス生活まで体験したことを語った自伝。

試し読みしての感想

An Post Irish Book Awardsの記事でも書きましたが、プロローグが一文です。書き出しが文の途中から始まるので一文以下かもしれません。そして2人称で書かれる文に、連想ゲームのような場面転換が続きます。もう脳みそぐるぐる。これは誰の物語だったか、著者のものだったか、自分のものだったか…と混乱していきます。

一転して1章は冷静に始まります。1人称小説のような語り口でした。

著者は週3日働き、後はひたすら舞台脚本を書いている…という状況が説明されます。若干金には困っているようですが、すごくうらやましい生活。ただ、どこか苦しそうな心理描写も入ります。アドバイスを求める人に対して辛辣な回答をしてしまう場面も、嫌な性格と一言で斬って捨てられない何かがありました。とても卑近な存在に感じます。

著者について

Arnold Thomas Fanning

ロンドン生まれダブリン育ち。上述したように舞台脚本を書いていました。本の出版は今回が初めてです。

SUNDAY INDEPENDENT NEWCOMER OF THE YEAR 2018ショートリスト

An Post Irish Book Awardsの1部門である、SUNDAY INDEPENDENT NEWCOMER OF THE YEAR 2018。

Newcomerの通り、新人賞の位置づけです。

An Post Irish Book Awardsについては↓

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受賞作品

NOTES TO SELF(by EMILIE PINE) 
Notes to Self: Essays (English Edition)

Notes to Self: Essays (English Edition)

 

性暴力にフェミニズム、鬱などなど。衝撃的な内容で埋め尽くされたエッセイ集。

表紙が衝撃的ですよね。昔の医学書のようです。こちらはノンフィクション部門でもショートリスト入りしていました。

著者は大学で現代演劇の助教授をされています。プロフィールを読むとかなり文化に造詣の深そうな方ですね。

ショートリスト作品

THE EARLIE KING AND THE KID IN YELLOW(by DANNY DENTON) 
The Earlie King & the Kid in Yellow (English Edition)

The Earlie King & the Kid in Yellow (English Edition)

 

アイルランドに雨が降る。黄色づくめの少年がEarlie Kingから赤ん坊を盗み出した。何かがある王の娘に、しゃべる像。Earlie Kingの監視があまねく行き届いているアイルランドで、少年は自分のマークを残していく。

ディストピア小説です。表紙にインパクトがあって目を引きますね。

THIS HOSTEL LIFE(by MELATU-UCHE OKORIE) 
This Hostel Life

This Hostel Life

  • 作者: Melatu Uche Okorie,Dr. Liam Thorton
  • 出版社/メーカー: Independent Publishing Network
  • 発売日: 2018/05/19
  • メディア: ペーパーバック
  • この商品を含むブログを見る
 

3つの物語の短編集。アイルランドへ移民してきた黒人女性の話。日々の中で受ける人種差別や性差別を描く。

アイルランドでの人種差別描写が非常にリアルなのか、Goodreadsのレビューでは「(読んでいて)自分が恥ずかしくなった」「鋭い指摘」と評されていました。人間、中々自分以外の人の境遇は想像しづらいものです。その中で小説は他者の痛みや感覚を教えてくれる貴重な存在なのかもしれません。

THE LOST LETTERS OF WILLIAM WOOLF(by HELEN CULLEN) 

ロンドン東部、the Dead Letter Depot(配達不能郵便物課)でWilliam Woolf(ウィリアム・ウルフ)は働いていた。郵便番号がないもの、字が汚すぎて読み取れないもの、雨で濡れてしまったもの、それらを捌いていくのがWilliamの仕事だった。ある日、宛名に‟My Great Love”とだけ書かれた手紙が届く。

これ、An Post Irish Book Awardsのサイトの書影ではカラフルな手紙が沢山しきつめてあるものでした。上記amazonのリンクだと折りたたんだ手紙を開いた風な表紙になってますね。どちらも凝っていて、かつ内容に合ったもので好きです。

PROMISING YOUNG WOMEN(by CAROLINE O’DONOGHUE) 
Promising Young Women (English Edition)

Promising Young Women (English Edition)

 

Jane(ジェーン)は26歳独身。ネットの世界では何でも相談事を受け止め、適切なアドバイスをしてくれるJolly(ジョリー)という女性になり切っていた。しかし現実世界で既婚者の上司にアプローチされた時、Janeは最悪の選択ばかりしてしまう。

ジャンルがダーク・コメディになっていました。あらすじを読むと重たいというか、まま昼ドラ展開なのですが。

MIND ON FIRE(by ARNOLD THOMAS FANNING) 
Mind on Fire: A Memoir of Madness and Recovery (English Edition)

Mind on Fire: A Memoir of Madness and Recovery (English Edition)

 

母の死後、躁うつ病に苦しみながらも舞台脚本家として執筆を続けた作者の自伝。自殺未遂やホームレスなど、経験したことを赤裸々に描く。

この本、ちょうどさっきまでamazonの試し読みをしていました。プロローグが1文です。読点のみで続けられる文章はまるで表紙のような渦に呑み込まれていく感覚がしました。

 

以上、受賞作品とショートリスト作品です。

性差別や人種差別、ディストピア等、社会に訴えるものが多く選ばれている印象です。

紹介:The Bespoke Hitman

本情報 

The Bespoke Hitman (English Edition)

The Bespoke Hitman (English Edition)

 

ジャンル:犯罪、ミステリー

ページ数:320

あらすじ

ハロウィンの夜、ベルファスト。3人の男が狼の仮装をして、今まさに銀行強盗に入らんとしていた。しかしそれは思わぬ危険を呼ぶことになる。

試し読みしての感想

プロローグと1章の温度差がすごい。

プロローグでは、ある少年が両親を殺すシーンが描かれます。書き出しからしホメロスの『イリアス』が引用されていたり、情景描写に悪魔とか神とか用いてきたりと、かなり格調高い文章の印象を受けました。

それに続く1章は場面変わって銀行強盗に入ろうとしている3人組の様子が描かれます。3人は緊張からか冗談を飛ばし合います。これがコミカルでおもしろい。主に映画ネタで盛り上がっています。私は半分程度しかわからなかったのですが、詳しい人ならもっと楽しいのかもしれません。地の文自体も、プロローグと比べて大分平易になっています。これを意図的に書き分けているのだとしたら作者すごい。

話の内容に触れると、この3人、ポンコツ臭が半端ないです。2人がおちゃらけて1人が冷静という構図はよく見るものの、結局3人とも銀行強盗でまごついてオロオロしています。そこらへんにいた客に言い負かされてますし。

著者について

Sam Millar

ベルファスト出身。犯罪小説を中心に執筆しています。他に舞台の脚本も手掛けているそうです。

RTÉ RADIO 1’S THE RYAN TUBRIDY SHOW LISTENERS’ CHOICE AWARD 2018ショートリスト

An Post Irish Book Awardsの1部門であるRTÉ RADIO 1’S THE RYAN TUBRIDY SHOW LISTENERS’ CHOICE AWARD 2018。

ラジオ番組のリスナーが選ぶ本、ということになっています。ジャンルは限定されていないはずですが、今年はミステリーが並んでいますね。リスナー層の影響でしょうか。

An Post Irish Book Awardsについては↓

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ショートリスト作品

A LADDER TO THE SKY(by JOHN BOYNE) 
A Ladder to the Sky (English Edition)

A Ladder to the Sky (English Edition)

 

Maurice Swift(モーリス・スウィフト)は才能以外なんでも持っている男だった。作家を志していたMauriceは西ベルリンのホテルで有名作家に出会う。作家の経験を小説のネタにして一躍有名になったMaurice。しかしその成功は転落の始まりでもあった。

EASON BOOKCLUBでもノミネートされていた作品です。

THE STOLEN GIRLS(by PATRICIA GIBNEY) 

ある月曜日、妊婦が死体となって発見された。同日、探偵Lottie Parker(ロッティ・パーカー)の事務所に赤ん坊をつれた女性が訪ねてくる。行方知れずとなった友人を探してほしいとのことだった。そんななか、2体目の死体が発見される。

探偵Lottie Parkerシリーズのひとつです。なかなか興味を引かれる導入部ですね。

著者は犯罪小説メインで活躍されています。ところでこちら、2017年の出版なんですがどういう基準でノミネートされているのでしょうか。

THE PRESIDENT IS MISSING(by BILL CLINTON & JAMES PATTERSON) 
The President Is Missing: A Novel (English Edition)

The President Is Missing: A Novel (English Edition)

 

大統領が消えた。その失踪の理由は誰もが想像だにしなかったものだった。元大統領が協力した、細部にわたってリアリティのあるミステリー。

これは邦訳が近々出るそうで日本でも話題になっていました。 

大統領失踪 上巻

大統領失踪 上巻

 

これですね。元大統領が小説を書いた、とのことで宣伝されていましたが、実際は設定協力とか監修とかその感じでしょうか。もう1人の著者もミステリー小説や子ども向け小説でベストセラーを連発している人気作家です。

THE RUIN(by DERVLA MCTIERNAN) 
The Ruin (English Edition)

The Ruin (English Edition)

 

警官Cormac Reilly(コーマック・レイリー)はある家で2人の子どもを保護する。その家の2階では母親が冷たくなっていた。それから20年。ゴールウェイで自殺者が出た。20年前の事件と関わりがあると踏んだCormacは独り捜査を進めることになる。

以前試し読みだけの感想を書きました↓

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記事でも書きましたが、タイトルRuinはアイルランド語と英語のダブルミーニングになっています。こういうの好き。

また、この作品は他の部門でもノミネートされています。デビュー作でこれほどとは驚きです。

SKIN DEEP(by LIZ NUGENT) 
Skin Deep

Skin Deep

 

Cordelia Russell(コーデリアラッセル)は南フランスで優雅な暮らしを送っていた。しかしその生活も破滅を迎えることになる。家へ帰ると腐臭にハエの羽音が聞こえてくる。そろそろ死体をどうにかしなければならない。

試し読みだけの感想↓

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少しサイコな&美女が破滅していく系のお話です。これも他部門と同時にノミネートされていますね。読みかじっただけですが、神話や小説の引用が多い印象でした。

THE WOMAN IN THE WINDOW(by A. J. FINN) 
The Woman in the Window: The most exciting debut thriller of 2018 (English Edition)

The Woman in the Window: The most exciting debut thriller of 2018 (English Edition)

 

Anna Fox(アンナ・フォックス)は独り身だ。いつも家でワインをがぶ飲みし、古い映画を見、隣人をのぞき見していた。Russells(ラッセルズ)家族が引っ越してきて、Annaは早速のぞき見を開始するが、見てはいけないものを見てしまう。

好奇心は猫をも殺すというやつですね。つい他人の生活が気になってしまうのはよくわかります。

この作品、映画化が決定しているようです。

 

以上6作品です。

前述したようにやはりミステリー、犯罪小説が多いですね。犯罪小説はそれで独立した部門があるので候補作が被ってしまっています。他、デビュー作などまだ駆け出しの作家の作品が選ばれている感じがします。それほどアイルランド出身の作家に限っていなさそうなのも印象に残りました。

SPECSAVERS POPULAR FICTION BOOK OF THE YEAR 2018ショートリスト

An Post Irish Book Awardsの1部門である、SPECSAVERS POPULAR FICTION BOOK OF THE YEAR 2018。

賞の名前の通り、Popular=人気の出た作品を中心にノミネートされています。若干、エンタメよりな気もします。

An Post Irish Book Awardsについては↓

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ショートリスト作品

THE IMPORTANCE OF BEING AISLING(by EMER MCLYSAGHT & SARAH BREEN) 
The Importance of Being Aisling: Country Roads, Take Her Home

The Importance of Being Aisling: Country Roads, Take Her Home

 

シリーズ2作目。前作での危機を乗り越え、平穏を取り戻したかに見えたAisling(アシュリン)の人生。しかしまたも悲劇に見舞われてしまう。職なし家なしのAislingは母のいる実家に戻らなければならなくなった。

前作も確か去年のAn Post Irish Book Awardsのどれかにノミネートされていた記憶があります。29歳のAisling、恋に仕事にと、働く女性をターゲットにした小説でしょうか。書評にて「Aislingの声は等身大なアイルランド人の声」(John Boyne)と書かれていました。

LETTERS TO MY DAUGHTERS(by EMMA HANNIGAN) 
Letters to My Daughters: The heartwarming new novel from the #1 bestseller (English Edition)

Letters to My Daughters: The heartwarming new novel from the #1 bestseller (English Edition)

 

3姉妹にとって、ナニー(乳母兼家庭教師)はかけがえのない存在だった。忙しい実母に代わって時には母、時には友人となり、良き相談相手だった。成長しそれぞれが母や妻となるなか、ナニーの死は3姉妹に大きな喪失感をもたらした。葬式後、ナニーが3姉妹に手紙を残したと弁護士から聞かされるが、その手紙がどこにも見つからない。実は実母が手紙を隠してしまっていたのだ。

こちらは前にレビューを書きました。↓

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「母」に焦点を当てた小説です。3姉妹は反抗期の娘がいたり、未婚の母となることを選んだり、思わぬ妊娠をしてしまったりなど母であること、母になることに問題と悩みを抱えています。そして3姉妹の母もまた、娘への接し方がわからずにいました。

著者は今年、癌のため亡くなりました。2005年から闘病、癌患者の為に様々な活動をしてこられました。今作が遺作だと思っていたのですが、もう1冊が来年出版予定になっています。

GRACE AFTER HENRY(by EITHNE SHORTALL) 
Grace After Henry: Winner of The Big Book Awards 2018 (English Edition)

Grace After Henry: Winner of The Big Book Awards 2018 (English Edition)

 

恋人Henry(ヘンリー)を亡くした後、Grace(グレース)は街中の至る所でHenryを見かけるようになる。自分の気が狂ったのかと疑うGrace。やがてHenryに似た別の男性に心惹かれていくが、それは元恋人に対する裏切りなのかと悩む。

試し読みだけの感想は以前書きました↓

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残された側の話は少し辛いものがありますね。悲しみに捕らわれたままなのも、立ち直ってしまうのもどちらも苦悩がありそうです。

著者はSunday Times Irelandのライター。今作が2作目です。

OUR SECRETS AND LIES(by SINÉAD MORIARTY) 
Our Secrets and Lies (English Edition)

Our Secrets and Lies (English Edition)

 

 2部立て。1部では21歳で思わぬ妊娠をしてしまったLucy(ルーシー)が恋人と共に中絶を企てる。2部ではLucyの子ども(双子)が夢に向かっていく中である真実を知ることに。

試し読みだけの感想を以前書きました↓

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いつかも書いたのですが、アイルランドは双子が多いそうです。それだけに小説でも双子が登場することが多いように思います。先述したLetters to my Daughtersの3姉妹も、長姉と双子という姉妹構成です。

著者はダブリン在住。今作が13冊目です。ベテランですね。女性向けの小説を中心に執筆されています。

A KEEPER(by GRAHAM NORTON
A Keeper (English Edition)

A Keeper (English Edition)

 

Elizabeth(エリザベス)は母の死をきっかけにアイルランドへ戻ることになった。戻った家に母の面影はほとんどなかった。しかし唯一、手紙を見つける。そこには母の秘密が隠されていた。

あらすじを読む限りだと40年前の母?の物語が中心になるようです。話の流れだけで言えばLetters to my Daughtersに似ているような。

著者はダブリン出身、BBCラジオパーソナリティーを務めています。

DANCING WITH THE TSARS(by ‘ROSS O’CARROLL-KELLY’ – PAUL HOWARD) 
Dancing with the Tsars

Dancing with the Tsars

 

妻が別の男性との子どもを身ごもったかもしれない。フェミニズム運動に無謀な戦いを挑む人、ロシアへの旅をする人。社会風刺をたっぷり入れ込んだシリーズ物。

著者名が長くなっているのは、Paul Howard氏がRoss O'carroll-Kelly名義で発表しているシリーズ物だからです。もはやIrish Book Awardの常連であり、毎年このシリーズはどこかしらにノミネートされています。去年はトランプ大統領っぽいネクタイを身につけたらトランプ大統領っぽくなってしまった男の話だった気がする。

 

以上、候補6作です。女性向けのものが多いですね。また、今年は「母」に焦点を当てた物語が多く感じます。

EASON BOOK CLUB NOVEL OF THE YEAR 2018ショートリスト

An Post Irish Book Awardsの1部門である、EASON BOOK CLUB Novel of the Year。

アイルランドの大手書店(兼雑貨店のような)であるEASONのサイトで、毎月オススメ本をジャンル問わず紹介しているEASON BOOK CLUB。この部門ではおそらくその中からさらに選りすぐった本をノミネートしているのではないかと思います。

その為か、他の部門に比べて一般的…というと言葉が悪いですが、今年を代表する人気作がノミネートされている印象です。

*An Post Irish Book Awardsについては↓

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ショートリスト作品

MILKMAN(by ANNA BURNS) 
Milkman (English Edition)

Milkman (English Edition)

 

もはや有名作品、今年のブッカー賞受賞作です。

架空の街、どこかの時代、みんなの興味の的となるのは危険だった。主人公Middle sister(次女)は平穏な暮らしを望み、彼氏(仮)の事もMilkmanと会っている事も母親に知られないよう注意していた。しかし噂が広まり、Middle sisterは周囲の興味の的となってしまう……というのが話の筋です。

この作品については私の拙文より遥かに素晴らしいレビューを書いている方がいらっしゃるので特に何も言う事はありません。その記事読んで。

著者はベルファスト出身、これまで2冊出版されています。

FROM A LOW AND QUIET SEA(by DONAL RYAN) 
From a Low and Quiet Sea: A Novel

From a Low and Quiet Sea: A Novel

 

 3人の主人公を据えた連作短編。1人はシリアの戦火から逃れ、1人は女性に恋焦がれ、1人は人生の終わりを前に告解するのが大まかな筋になっています。全く関係のない3人が不思議と1つに繋がっていくという、連作短編の器でありながら大枠は長編です。

こちらについては以前レビューを書きました。

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 著者はティペラリー出身。出す本出す本何かしらの賞にノミネートされている勢いです。また大学で教鞭もとっている様子。

A LADDER TO THE SKY(by JOHN BOYNE) 
A Ladder to the Sky

A Ladder to the Sky

 

Maurice Swift(モーリス・スウィフト)は才能以外なんでも持っている男だった。作家を志していたMauriceは西ベルリンのホテルで有名作家に出会う。作家の経験を小説のネタにして一躍有名になったMaurice。しかしその成功は転落の始まりでもあった。

この作品はAn Post Irish Book Awardsの他部門でもノミネートされています。A Ladder to the Skyを成功して有名になっているMauriceの状況を表す語として使っていると思うのですが、そこから落ちた時の酷さを想起させるに階段は良いたとえですよね。

著者はダブリン出身、彼自身が有名作家ですね。『縞模様のパジャマの少年』は映画化、邦訳されてます。『ヒトラーと暮らした少年』も今年邦訳されてました。

NORMAL PEOPLE(by SALLY ROONEY) 
Normal People (English Edition)

Normal People (English Edition)

 

Marianne(マリアンヌ)とConnell(コネル)は親の関係から頻繁に言葉を交わす関係だった。ただそれも高校までのこと。大学へ入り、2人の関係は疎遠になってしまう。くっついたり離れたりしながら、2人は互いの影響で人生を変えていくことになる。

こちらは前にレビューを書きました。

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この本、今年読んだ中でトップレベルにおもしろかったです。

著者はメイヨー出身、ダブリン在住。Normal Peopleが2冊目の出版作品です。

TRAVELLING IN A STRANGE LAND(by DAVID PARK) 
Travelling in a Strange Land (English Edition)

Travelling in a Strange Land (English Edition)

 

 ひどい吹雪に見舞われたアイルランド島グレートブリテン島。さらに主人公Tom(トム)の息子が病に臥せってしまう。大学の寮で暮らす息子を迎えに、Tomは1人ベルファストからサンダーランドへ車を走らせる。雪道を進む中、Tomは昔の記憶を思い返してしまう。

試し読みだけの感想ならこちらに↓

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今まさにこの本は読書中です。雪の表現がすごいのと、回想に入る流れがスムーズでぐんぐん読めます。

著者は9冊の本を出版している、北アイルランドを代表する作家です。

FUTURE POPES OF IRELAND(by DARRAGH MARTIN) 
Future Popes of Ireland (English Edition)

Future Popes of Ireland (English Edition)

 

 Bridget Doyle(ブリジット・ドイル)の夢は一族からアイルランド初の教皇を輩出することだった。そんな中、義理の娘が出産後に亡くなり、孫4人はBridgetの手にゆだねられた。それから30年。孫は全員教皇になれそうにも、なるつもりもなさそうだ。特に長女Peg(ペグ)は思春期に家出して以来、家で話題にあげることすらタブーになっていた。

今年、アイルランド教皇が訪問された時、あちこちでお祭り騒ぎだったのを覚えています。それほどアイルランドにおける教皇人気は高いのですね。

そしてそれを家族の問題と結びつけて小説を書いてしまう、というのもすごいことです。あらすじを読むに、孫4人(内3人は3つ子)は同性愛者であったり、環境保全に夢中であったりします。昔から信仰されてきたキリスト教教皇)と、最近特に取り上げられるようになった同性愛や環境保全の対比が興味深いですね。

著者はダブリン出身、ロンドン在住。LGBTQ+の権利保護活動もされているようです。なるほど。他、児童書も書かれています。

 

以上6作がノミネートされています。あらすじを見ても共通点はあまりなく、これまたアイルランド文学界の多様性が見てとれますね。あえて言うなら家族、そして過去の話が多いでしょうか。それぞれ大なり小なりアイルランド島だけで終わらないストーリーなのも。