6&4

アイルランドの本(小説・児童書・YA)を紹介するブログです。

レビュー:Irish Fairy Tales Myths & Legends

ジャンル:民話、神話

ページ:256

あらすじ

アイルランドで昔から語り継がれている民話、そして神話をわかりやすくリライトした民話・神話集。ハロウィーンで有名なジャック・オー・ランタンの成り立ちや銀腕のヌアザ、クー・フーリン、フィン・マク・クウィルの物語まで収録したアイルランドオールスターズ感たっぷりの1冊。

収録話は以下

民話より

・The King's Secret(王様の耳はロバの耳)

・King Corc and his Daughter

・The Twelve Wild Geese(『野の白鳥』類話)

・The Lazy Beauty and her Aunts

・The Lady of Gallarus(ゴルラスの婦人)

・The Legend of Bottlehill

・Jack and the Man in Black(ジャック・オー・ランタン)

 

神話サイクルより

・Nuada of the Silver Arm(銀腕のヌアザ)

・Balor of the Evil Eye(魔眼のバロール)

・The Children of Lir(リルの子どもたち)

 

アルスターサイクルより

・The Hound of Cullan(クランの犬)

・Cúchulainn and Emer(クー・フーリンとエマー)

・The Cattle Raid of Cooley(クーリーの牛争い)

 

フィンサイクルより

・Fionn and the Salmon of Knowledge(フィンと知識の鮭)

・Fionn and the Fire Demon of Tara(フィンと炎の悪魔)

・The Giant's Causeway(ジャイアンツ・コーズウェイ)

・The Birth of Oisín(オシーンの誕生)

・Oisín in Tír na n-Óg(常若の国のオシーン)

*引用の内()内は本記事執筆者追記

感想

読みやすさ抜群

正直言って、アイルランド神話は分かりづらい。興味を持ったところで何から入ればいいのか、どれを読めばいいのか。何となく断片的には知っているが、全体を把握できなくてもどかしいような気持ちになる。

この本はトゥアハ・デー・ダナンのアイルランド島上陸から、支配権を握り異界(地下)へ追いやられるまでを一貫した流れで描いてくれている。他にもクー・フーリンやフィン・マク・クウィルの人生のハイライト部分をうまい具合に並べて収録している。

最初に書いたような気持ちであった私にとって、この本は最適だったように思う。もちろん、現代読者に分かりやすいよう体裁を整えたり、若干変えたりしている部分もあるだろう。これを読んで本当(?)のアイルランド神話と受け取ってしまうのは危険だと思っている。

しかし読み物として、アイルランド神話の輪郭を理解するためとして、この本はとても良かった。歴史サイクル以外の各サイクルから有名な話を紹介してくれているし、登場人物が活き活きしていて楽しい。恐らくアイルランド神話を何も知らない状態で読んでも楽しめるのではないだろうか。他の話も同じ著者で出してほしい。

著者の解説が楽しい

それぞれの話の前には著者による紹介・解説が挿入されている。落語の枕みたいなもので、これが面白かった。

話のあらましはもちろんとして、類似のおとぎ話やアイルランドでどのように紹介されてきたのかを語ってくれる。オシーンの話で日本の浦島太郎が類似話として紹介されていたのは意外だった。海外で浦島太郎はそんなに知名度があるのだろうか。

著者について

Kieran Fanning

小説家・教師。子ども向けのフィクションを執筆している。