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レビュー:Weekend Dad

本情報・あらすじ

The Weekend Dad (English Edition)

The Weekend Dad (English Edition)

 

 ジャンル:家族モノ、恋愛

あらすじ:28歳、職なし・持ち家なし・貯金なし。自称詩人。主人公エメットはつい数週間前に「あなたには7歳になる娘がいる」と聞かされたばかりだった。娘と面会するためロンドンまでやってきて弟の家へ居候するものの、いまだに娘ミスティを愛せずにいた。

そんな中、エメットは初恋の相手デイジーと再会する。しかし幼少期にぎくしゃくした別れ方をしたせいで、エメットは咄嗟に初対面を装ってしまう。

ミスティの学校でのトラブル、ミスティの母アマンダとの関係、そしてデイジー。エメットの弟や両親の問題を通してエメットが精神的に成長していく物語。

試し読み段階での感想はこちら↓から

rokuyon64.hatenablog.com

登場人物

Emmet O'Donoghue(エメット・オドノヒュー)

主人公。アイルランド出身、28歳。短所はあげればキリがありません。困ると現実逃避して寝るし、野良犬が自分のアゴをなめてくれたからって拾ってしまう。娘やほかの人に見栄を張りたくてすぐ嘘をつく。緊張しいで胃が痛くなりやすい。あと惚れっぽい…等々。

詩人を目指しているが自信はない。いつも心の中で「right thing」は何かを考えていて、精神的に大人になりたいという意識はある。ただ実行できない。

Misty(ミスティ)

エメットとアマンダの娘。7歳、ロンドン在住。アマンダの現彼氏ローランドと3人暮らしをしていた。

年相応にかわいいです。エメットが夜読み聞かせをしてくれるのがお気に入り。

Daisy(デイジー)

エメットの初恋の相手。ロンドンで彼と再会し、関係を築いていく。母親に振り回されがち。

Amanda(アマンダ)

ミスティの母親。Roland(ローランド)と同棲している。ミニマリスト

ミスティに会わせるため、エメットをロンドンへ呼んだ。なかなかの教育ママで、砂糖などをミスティに食べさせない。

舞台

 舞台はほぼ英国・北ロンドンで展開されます。かなり風景描写は詳しいので、読んでいると自分の中でロンドンの街が思い描けてきます。そういった意味ではかなり読みやすいのではないかと。

エメットはアイルランドのウェックスフォードからミスティに会うため、そのロンドンへ引っ越してきます。読み出しはエメットの幼少期のエピソードですが、その舞台もウェックスフォード。南東にある港町です。エメットは船で英国まで来たっぽいですね。

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感想

デイジーはエメットの過去の象徴

なのではないかと…思うんですよね。デイジーと再会してから、エメットはひたすら彼女ばかり追いかけます。それは彼が幼いころ上手くデイジーと別れられなかったからで、かつその思い出を昇華できずに大人になってしまったからのように見えます。失った過去を取り戻すためのデイジー。

エメットは物語の中で、よく空想や回想をします。あんまり突然回想するのでそれが今起こっていることなのか、過去起こったことなのか空想なのか読んでいるだけの私も判別できなくなったくらいです。その想像の中はいつも温かい幸福な雰囲気がありました。エメットはおそらく過去に戻りたかったのではないでしょうか。その気持ちはすごくわかります。詩人になりたいけれど、出版社に作品を送ることも人前で発表するわけでもないエメットは永遠に夢をみていたいのでしょう。ものすごく共感性の高い主人公でした。

しかし反面、エメットは「ちゃんとしたことをして」「大人になる」ことにこだわります。ミスティの父になること、詩人の夢を捨て働くこと。自身の「内なる乙女」を隠して立派にふるまうこと。

デイジーを追いかけるエメットは、そうした自分がすべきことからの一種の逃避だったのではないかと思います。

ミスティかわいすぎる

アマンダとエメットの娘ミスティは年相応の女の子です。習い事が嫌いだったり、仲良しの男の子とケンカしたり。

彼女は物心つく前からローランドと一緒に暮らしていたので、血のつながりがないエメットとどう接したらいいか、最初わかりません。そもそもエメットがこっちに来た理由はミスティが「血のつながったお父さんに会ってみたい」と言い出したからなのにも関わらず。ローランドは「Daddy」と呼んでエメットは「エメット」と呼ぶほどです。(それで落ち込むエメットはエメットでめちゃくちゃ応援したくなります)

そんなミスティとエメットが1歩ずつ仲良くなっていく様子が読んでいて楽しいんですよね。エメットはこれまでを読んで分かる通り精神年齢が子どもですし、最初2人は友人のような関係になります。その後エメットの読み聞かせでミスティがアイルランドの民話や神話を気に入ったり、本好きになったり、そんなちょっとした変化が起きます。ついにはエメットを「Daddy」ではないのですが、特別な呼び方をしてくれるようになります。不思議と達成感がありました。

アイルランド人であること

アイルランドからロンドンへ越してきたエメット。そこでは異邦人です。言葉が通じるのに違う国の人、というのが日本人である私には想像がつかないところではありますが、とにかくエメットはそこで「アイルランド人って〇〇だよね」と言われまくります。気楽に生きていたエメットは初めてアイルランド人としての自分を意識するようになります。そしてそれを後世に伝えていくことも。アイルランド好きとしてはロンドンで暮らしながらもアイルランドを忘れないエメットを嬉しく感じました。

子育てモノでありながら夢を叶えることや文化を後世に伝えることなど、色々な要素の入った小説でした。詩人を目指しているだけあってエメットが多くの詩人に言及するのも楽しい一冊です。