6&4

アイルランドの本(小説・児童書・YA)を紹介するブログです。

SPECSAVERS POPULAR FICTION BOOK OF THE YEAR 2018ショートリスト

An Post Irish Book Awardsの1部門である、SPECSAVERS POPULAR FICTION BOOK OF THE YEAR 2018。

賞の名前の通り、Popular=人気の出た作品を中心にノミネートされています。若干、エンタメよりな気もします。

An Post Irish Book Awardsについては↓

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ショートリスト作品

THE IMPORTANCE OF BEING AISLING(by EMER MCLYSAGHT & SARAH BREEN) 
The Importance of Being Aisling: Country Roads, Take Her Home

The Importance of Being Aisling: Country Roads, Take Her Home

 

シリーズ2作目。前作での危機を乗り越え、平穏を取り戻したかに見えたAisling(アシュリン)の人生。しかしまたも悲劇に見舞われてしまう。職なし家なしのAislingは母のいる実家に戻らなければならなくなった。

前作も確か去年のAn Post Irish Book Awardsのどれかにノミネートされていた記憶があります。29歳のAisling、恋に仕事にと、働く女性をターゲットにした小説でしょうか。書評にて「Aislingの声は等身大なアイルランド人の声」(John Boyne)と書かれていました。

LETTERS TO MY DAUGHTERS(by EMMA HANNIGAN) 
Letters to My Daughters: The heartwarming new novel from the #1 bestseller (English Edition)

Letters to My Daughters: The heartwarming new novel from the #1 bestseller (English Edition)

 

3姉妹にとって、ナニー(乳母兼家庭教師)はかけがえのない存在だった。忙しい実母に代わって時には母、時には友人となり、良き相談相手だった。成長しそれぞれが母や妻となるなか、ナニーの死は3姉妹に大きな喪失感をもたらした。葬式後、ナニーが3姉妹に手紙を残したと弁護士から聞かされるが、その手紙がどこにも見つからない。実は実母が手紙を隠してしまっていたのだ。

こちらは前にレビューを書きました。↓

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「母」に焦点を当てた小説です。3姉妹は反抗期の娘がいたり、未婚の母となることを選んだり、思わぬ妊娠をしてしまったりなど母であること、母になることに問題と悩みを抱えています。そして3姉妹の母もまた、娘への接し方がわからずにいました。

著者は今年、癌のため亡くなりました。2005年から闘病、癌患者の為に様々な活動をしてこられました。今作が遺作だと思っていたのですが、もう1冊が来年出版予定になっています。

GRACE AFTER HENRY(by EITHNE SHORTALL) 
Grace After Henry: Winner of The Big Book Awards 2018 (English Edition)

Grace After Henry: Winner of The Big Book Awards 2018 (English Edition)

 

恋人Henry(ヘンリー)を亡くした後、Grace(グレース)は街中の至る所でHenryを見かけるようになる。自分の気が狂ったのかと疑うGrace。やがてHenryに似た別の男性に心惹かれていくが、それは元恋人に対する裏切りなのかと悩む。

試し読みだけの感想は以前書きました↓

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残された側の話は少し辛いものがありますね。悲しみに捕らわれたままなのも、立ち直ってしまうのもどちらも苦悩がありそうです。

著者はSunday Times Irelandのライター。今作が2作目です。

OUR SECRETS AND LIES(by SINÉAD MORIARTY) 
Our Secrets and Lies (English Edition)

Our Secrets and Lies (English Edition)

 

 2部立て。1部では21歳で思わぬ妊娠をしてしまったLucy(ルーシー)が恋人と共に中絶を企てる。2部ではLucyの子ども(双子)が夢に向かっていく中である真実を知ることに。

試し読みだけの感想を以前書きました↓

rokuyon64.hatenablog.com

いつかも書いたのですが、アイルランドは双子が多いそうです。それだけに小説でも双子が登場することが多いように思います。先述したLetters to my Daughtersの3姉妹も、長姉と双子という姉妹構成です。

著者はダブリン在住。今作が13冊目です。ベテランですね。女性向けの小説を中心に執筆されています。

A KEEPER(by GRAHAM NORTON
A Keeper (English Edition)

A Keeper (English Edition)

 

Elizabeth(エリザベス)は母の死をきっかけにアイルランドへ戻ることになった。戻った家に母の面影はほとんどなかった。しかし唯一、手紙を見つける。そこには母の秘密が隠されていた。

あらすじを読む限りだと40年前の母?の物語が中心になるようです。話の流れだけで言えばLetters to my Daughtersに似ているような。

著者はダブリン出身、BBCラジオパーソナリティーを務めています。

DANCING WITH THE TSARS(by ‘ROSS O’CARROLL-KELLY’ – PAUL HOWARD) 
Dancing with the Tsars

Dancing with the Tsars

 

妻が別の男性との子どもを身ごもったかもしれない。フェミニズム運動に無謀な戦いを挑む人、ロシアへの旅をする人。社会風刺をたっぷり入れ込んだシリーズ物。

著者名が長くなっているのは、Paul Howard氏がRoss O'carroll-Kelly名義で発表しているシリーズ物だからです。もはやIrish Book Awardの常連であり、毎年このシリーズはどこかしらにノミネートされています。去年はトランプ大統領っぽいネクタイを身につけたらトランプ大統領っぽくなってしまった男の話だった気がする。

 

以上、候補6作です。女性向けのものが多いですね。また、今年は「母」に焦点を当てた物語が多く感じます。