6&4

アイルランドの本(小説・児童書・YA)を紹介するブログです。

SUNDAY INDEPENDENT NEWCOMER OF THE YEAR 2019ショートリスト

An Post Irish Bool Awardsの1部門、SUNDAY INDEPENDENT NEWCOMER OF THE YEAR。

新人賞の位置づけである。

新人、とだけあって、今までにない作風や題材の取り上げ方を評価されているような気がする。今年は社会派な作品が多いだろうか。

An Post Irish Bool Awardsについては↓

rokuyon64.hatenablog.com

受賞作品

WHEN ALL IS SAID(by ANNE GRIFFIN)  

When All Is Said: A Novel (English Edition)

When All Is Said: A Novel (English Edition)

  • 作者:Anne Griffin
  • 出版社/メーカー: Thomas Dunne Books
  • 発売日: 2019/03/05
  • メディア: Kindle
 

ジャンル:人生

ページ:326

あらすじ:これは一晩で語られた、1人の男の人生の話である。6月、土曜の夜、ホテルでMaurice Hanniganは5杯の酒を注文した。それぞれ1杯ずつを人生で関わった5人に捧げ、Mauriceはその人物との話を物語るのだった。

著者:ダブリン出身。2013年から執筆を始め、短編を主に書いていた。今作で長編デビュー。

NATIONAL BOOK TOKENS POPULAR FICTION BOOK OF THE YEAR 2019にもノミネートされた作品。とにかく文章が美しい。

ノミネート作品

DON’T TOUCH MY HAIR(by EMMA DABIRI) 

Don't Touch My Hair (English Edition)

Don't Touch My Hair (English Edition)

  • 作者:Emma Dabiri
  • 出版社/メーカー: Penguin
  • 発売日: 2019/05/02
  • メディア: Kindle
 

ジャンル:歴史、フェミニズム、人権

ページ:256

あらすじ:これは黒髪の話である。植民地時代から現代にいたるまで、黒人女性の髪がどのように抑圧されていたのか、どのように解放されていったのか、そしてこれからの展望を語る。

著者:ダブリン出身。モデル、研究者など多くの顔を持つ。今作は自身が子どもの頃の体験から書かれたという。

ファッション関係には疎いのだが、最近、「ある文化にルーツをもたない人がその文化の伝統的な髪型をする」ことが「文化の盗用」として批判されることもあるらしい。この本のあらすじで触れられているキム・カーダシアンの編みこみというのもこれのことだろう。こういった本を知るたびに、自分は人種差別についてあまりに無頓着・鈍感であると痛感する。

MINOR MONUMENTS(by IAN MALENEY) 

Minor Monuments (English Edition)

Minor Monuments (English Edition)

  • 作者:Ian Maleney
  • 出版社/メーカー: Tramp Press
  • 発売日: 2019/04/04
  • メディア: Kindle
 

ジャンル:エッセイ

ページ:240

あらすじ:家族と記憶についてつづったエッセイ集。祖父がアルツハイマーにかかったことで、著者は記憶について、家とは何か、家族の絆について考えていく。

著者:ダブリン在住。作家としても、Webデザイナーとしても活躍中。

著者の祖父が暮らしているのは田舎の農場である。そこに訪ねた時の記憶から最初のエッセイは始まっている。農場を歩きながらダブリンで見た美術品のことを思い出すなど、著者の思考の流れのままに文章が流れていく感じ。

SHOW THEM A GOOD TIME(by NICOLE FLATTERY) 

Show Them a Good Time (English Edition)

Show Them a Good Time (English Edition)

  • 作者:Nicole Flattery
  • 出版社/メーカー: Bloomsbury Publishing
  • 発売日: 2019/03/21
  • メディア: Kindle
 

ジャンル:短編集、不条理、コメディ

ページ:256

あらすじ:どこかおかしい世界での女性を描く。移民したが出戻った人、ディストピアなキャンパスライフを送る大学生2人、世界が破滅に向かっているのに陽気な教師…ブラックユーモアたっぷりに描かれた8作を収めた短編集。

著者:ゴールウェイ在住。The Dublin Reviewなどで短編を発表している。

「糞として扱われるのに慣れている人はいないだろう」なんという書き出しか。これだけでこの作家のファンになりそうだ。他にもピリッとした文章が多い。デビュー作でこれだけ作家の世界を確立しているのはすごい。

LAST ONES LEFT ALIVE(by SARAH DAVIS-GOFF) 

Last Ones Left Alive: The 'fiercely feminist, highly imaginative debut' - Observer (English Edition)

Last Ones Left Alive: The 'fiercely feminist, highly imaginative debut' - Observer (English Edition)

 

ジャンル:ディストピア

ページ:280

あらすじ:世界は荒涼し、野にはゾンビたちがはびこっている。そんな時代に生まれ育ったOrpenは、母亡き後、保護者のMaeveと共に徒歩で旅をしていた。しかしMaeveがゾンビに感染してしまう。感染者はすぐ殺すべきだが、OrpenはMaeveを救おうと奮闘する。

著者:ダブリン在住。アイルランドの独立系出版社Tramp Pressの創設者の1人。

今作がTramp Pressから出ていないのは本人のこだわりなのだろうか。

いずれ読みたいと思っていた小説。荒涼とした乾いた土地と、主人公のドライな語り口調が非常にマッチしていた。

LEONARD & HUNGRY PAUL(by RÓNÁN HESSION) 

LEONARD AND HUNGRY PAUL (English Edition)

LEONARD AND HUNGRY PAUL (English Edition)

  • 作者:Ronan Hession
  • 出版社/メーカー: Bluemoose Books
  • 発売日: 2019/03/20
  • メディア: Kindle
 

ジャンル:ユーモア、友情

ページ:245

あらすじ:LeonardとHungry Paulは友人である。物静かで紳士的、世界を常人とは違った風に見ている。そんな2人がこの世界での居場所を探そうと奮闘する物語。

著者:ソングライター、ミュージシャンとしても活躍。

文字が小さい。どちらかといえば静的な物語なのだろうか。文章も落ち着いていて、美しい。1章が「Leonardは~」と始まり、2章が「Hungry Paulは~」と始まるのも好きだ。