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アイルランドの本(小説・児童書・YA)を紹介するブログです。

NATIONAL BOOK TOKENS POPULAR FICTION BOOK OF THE YEAR 2019ショートリスト

An Post Irish Book Awardsの1部門である、NATIONAL BOOK TOKENS POPULAR FICTION BOOK OF THE YEAR 2019。

賞の名前の通り、Popular=人気の出た作品を中心にノミネートされている。若干、エンタメよりな気も。

An Post Irish Book Awardsについては↓

rokuyon64.hatenablog.com

受賞作品

ONCE, TWICE, THREE TIMES AN AISLING(by EMER MCLYSAGHT & SARAH BREEN) 

Once, Twice, Three Times an Aisling (English Edition)

Once, Twice, Three Times an Aisling (English Edition)

 

ジャンル:ラブコメ

ページ:416

あらすじ:Aislingは30才に。大人になるということ、結婚、これからの人生。色々な悩みやトラブルと奮闘しつつ、ドタバタしながら彼女は自分の人生を懸命に過ごしていく。Aislingシリーズ3作目。

著者:2人組。共にジャーナリスト。

アイルランドでものすごく人気のあるシリーズなので受賞も納得。まさにPopular。他人のために行動できるAislingの性格が好き、というレビューをいくつか見た。文章は軽快で読みやすい。

ノミネート作品

SEVEN LETTERS(by SINÉAD MORIARTY) 

Seven Letters (English Edition)

Seven Letters (English Edition)

 

ジャンル:家庭、親子

ページ:352

あらすじ:Sarahは毎年、娘のために誕生日の手紙を書いていた。その手紙が7通目になった年、Sarahの妊娠が発覚する。夫、娘、生まれてくる息子と一緒に幸せな家族になれると信じていたが、妊娠から数か月、Sarahは倒れてしまう。

著者:ダブリン出身。ジャーナリストとして勤めた後、作家に。主にロマンス小説を書く。猫とチョコが好き(らしい)。

こんなのあらすじだけで泣けてしまう。身近な人が病に倒れた時、周りは何ができるのか。あるいは、大切な人を残していかなければならなくなった時、自分に何ができるのか。最近、周りで不幸があったこともあり考えてしまう。

SCHMIDT HAPPENS(by ROSS O’CARROLL-KELLY) 

Schmidt Happens (English Edition)

Schmidt Happens (English Edition)

 

ジャンル:風刺、コメディ

ページ:384

あらすじ:今年の大みそかは最悪だ。妻は他人との子どもを出産するし、母は自分に対して復讐心を燃やしているし、息子は何か変なことをやっているし。おまけにラグビーアイルランド代表のヘッドコーチであるジョー・シュミットから電話がかかってきた。

著者:今作の主人公。ジャーナリストPaul Howardによって生み出される。The Irish Timesなどで連載をしている内に、なぜか19冊も本を出していることになってしまった。

また君か。毎年どこかしらの部門でノミネートされているRossシリーズ。大人気だから仕方ない。今作は19作目になる。時事ネタを盛り込んだ軽く読める小説という位置づけだろうか。挿絵も漫画チック。

WHEN ALL IS SAID(by ANNE GRIFFIN) 

When All is Said: The Number One Irish bestselling phenomenon (English Edition)

When All is Said: The Number One Irish bestselling phenomenon (English Edition)

  • 作者:Anne Griffin
  • 出版社/メーカー: Sceptre
  • 発売日: 2019/01/24
  • メディア: Kindle
 

ジャンル:人生

ページ:326

あらすじ:これは一晩で語られた、1人の男の人生の話である。6月、土曜の夜、ホテルでMaurice Hanniganは5杯の酒を注文した。それぞれ1杯ずつを人生で関わった5人に捧げ、Mauriceはその人物との話を物語るのだった。

著者:ダブリン出身。2013年から執筆を始め、短編を主に書いていた。今作で長編デビュー。

とにかく文章が美しい。静かで、物悲しい、老人の歴史の物語である。タイトルも好きだ。When he says all ではなくWhen All is Saidとすることで何となく主人公の過去がペラリペラリと1枚ずつ明らかになっていく感覚がする。

POSTSCRIPT(by CECELIA AHERN) 

ジャンル:ロマンス

ページ:368

あらすじ:前作「P.S.アイラヴユー」から6年。Hollyは新たな人生を歩み出していた。しかしGerryの手紙に感化された人たちがPS I Love You Clubを立ち上げ、Hollyに手伝いを依頼してきた。未来に進むことは過去に置いてきた人たちへの裏切りになるのか。Hollyは再びGerryの死と向き合うことになる。

著者:ダブリン出身。父は元首相。デビュー作「P.S.アイラヴユー」はベストセラーとなり、映画化もされた。 

P.S.アイラヴユー

P.S.アイラヴユー

 

「P.S.アイラヴユー」の出版が2004年。それから15年の時を経て続編が出るというのでかなりニュースになっていた記憶がある。セシリア・アハーンは邦訳も多い有名作家。昨年はShort Story部門のショートリスト入りをしていた。

文章は非常に読みやすい。段落のまとまりごとに空白行が入っている書き方は現代的だなあと思う。

FILTER THIS(by SOPHIE WHITE) 

Filter This: The modern, witty debut everyone is talking about (English Edition)

Filter This: The modern, witty debut everyone is talking about (English Edition)

  • 作者:Sophie White
  • 出版社/メーカー: Hachette Books Ireland
  • 発売日: 2019/09/05
  • メディア: Kindle
 

ジャンル:インスタ、現代

ページ:384

あらすじ:Aliには夢がある。インスタグラムで1万人のフォロワーを獲得し、インフルエンサーになることだ。ある日、妊娠しているフリをしたら1日でフォロワーが千人も増えた。これこそが夢を叶える秘策だとAliは感じるようになる。一方、アイルランドの有名インフルエンサーShellyもまた、インスタでは言えない秘密を抱えていた。

著者:ダブリン在住。何年間もコラム連載を行った後、料理系のエッセイを出版。小説として出版するのは今作が初めて。

現代的な、余りに現代的な。インスタでの成功を目指すあまり私生活が破滅に向かう、という筋書きのようだ。「インスタ世代にこそ読んでほしい」とのレビューもあった。

本文は@有り、絵文字有り、ハッシュタグ有り、くだけた表現有りと、中々読む人を選びそう。インスタグラムやブログに関して、ある程度の知識は前提として書かれている。筆者もインスタなどを日常的に使う人にこそ読んでほしくてこういう文体を選んだのかもしれない。

 

Popularを売れている、と解釈するならこれだけシリーズものがショートリスト入りしているのも頷ける。他には現代的な小説が選ばれている。その時代ならではのものを反映した部門だと感じた。